第17話 戦いの一日

「ったく……好き勝手言ってくれちゃって」


 多分一番好き勝手言ったのはクレセアだと思う……というのは胸のうちにしまっておこう。

 

「フォル、この人数なんとかなるものなの?」


 俺が喉まででかかった言葉を飲み込んでいると、難しい顔をしたままのクレセアに声を掛けられる。


「ううむ……」


 俺は改めて周囲を見回す。

 俺達が作った弁当を覚えてくれていたというラデロさん。

 心配そうな表情の彼と、ちらちらとこちらを伺うたくさんの男たち。


 そして大柄な身体つきに赤い髪と、同じく赤い豊かな髭を蓄えたルデンツァ伯。

 事前に伝え聞いた物騒な噂が本当かは知らないが、なかなかの迫力である……。


 ここで任せとけ!と言えれば格好いいのだが、この人数は当然想定外。

 しかし、商談の前提として彼らに食事を提供することを要求されているのは事実。


 そこまで食べたい!と言ってもらえるのは嬉しいんだけれども、この状況では喜んでばかりもいられない。


「質問を変えるわ。フォル、どうしたらなんとかできる……?」


 さきほどまでの強気はなりを潜め、やや不安そうにこちらを見るクレセア。

 その表情はずるいな……。


 どうする……。

 燻製の数は絶対的に足りない。

 出そうと思っていた料理では30人を超えるであろう彼らに提供できないだろう。


 いや……!


 昨日試していた料理『スープ』、あれならどうだろう。

 『軟骨』を食べてもらうことは難しいが、水を入れて煮込むことで、ただ肉を出すよりは多くの人に振る舞うことはできる。


「でも……さすがに具材が足りないな」

「具材?」


 グラノを浸して食べる……とかも考えられるけれど。

 一番相性が良さそうなのは水で戻せる乾燥イモだろう。

 汁物であるスープにいれてしまえば、かなり腹持ちもしそうだ。


「乾燥イモがあったりすると助かるけど……」


 しかしながらレブレではイモの栽培は難しい……だから別のもの……と頭を切り替えようとすると。


「お嬢様……これは!」

「ふふふ……ツキが回ってきたわ……!」


 心底嬉しそうなディエールさんと、ちょっと黒い笑みを浮かべたクレセアがそこにいた。

 彼女は不安そうな表情をあっという間に引っ込めて、一歩前に出る。


「ルデンツァ伯、貴方達『話がある』のじゃないのかしら?」


 身長差に加え、親子ほどの年齢差があるように見える彼女とルデンツァ伯。

 そんな二人の貴族は対照的だが、さんさんと差し込む朝陽の前で不思議と対等に見えた。


「こんな時期にただの旅行ってわけじゃないでしょうし?領主を無理に挑発する意味だってないわよね?」

「……」


 濃い目の褐色肌に美しい白髪の女性、シオネさんはクレセアの言葉に押し黙る。

 港に船が着いた時に降りてきていた女性で、先ほどまでなかなか挑戦的な態度であったが、今はどちらかというとおしとやかな感じに見える。


「何か私に話がある……違う?そうね……多分、私達に在庫の『タナイモ』でも持ってきたんでしょう?」

「……!!」


 ぴくりと反応したのはシオネさんの主、ルデンツァ伯。


 そして俺もであった。

 『タナイモ』は食べたことがある。

 乾燥イモとは格の違う美味しさで、これも熱するのに適した食材だったはずだ……!


「うちの執事は優秀だから、貴方達の状況なんて筒抜けよ。条件次第じゃ話をしてやらないこともないわ」

「……聞かせてくれ」


 答えるルデンツァ伯は不思議とどことなく楽しそうであった。

 余裕がある……というよりはどこか無邪気な様子。

 シオネさんはそんな主をちらりと確認した後、彼の後ろへ下がった。


「まずは貴方達のお腹を満たすために、その一部を提供なさい。調理師の彼に料理をお願いするから」

「ふむ……」

「味は心配いらないわ!……って私が言うことじゃあないのかもだけれど」


 ややばつが悪そうにする彼女に、思わず笑ってしまう。

 一瞬俺のほうを見たクレセアはそのまま続ける。

 

「も、もちろん調理の代金も支払ってもらうわよ。本来ならもてなしとするのでしょうけど、人数超過の上随分失礼を働かれたもの。そこまでしてくれたら、貴方達の話を聞く余地を用意するわ」

「……それはつまりレブレ領側の話も聞け、ということだな?」

「当然ね」


 かなり強引な駆け引きに思えたが、ルデンツァ伯は――顔立ちの迫力はそのままだけれど――落ち着いた様子だ。


「もし断ったならどうする?」


 そして、ゆっくりと試すように彼はクレセアに問いかけた。


「貴方一人とその素敵な雲船は帰れるわ。お仲間は領地へ許可なく立ち入った罪で拘束するけれどね」


 ほとんど即答に近い状態で答える彼女。

 

 もはや脅しとも言えるが……実際予定以上の数でやってきた時点で領主が上陸を断ることもできるのだ。

 貴族その人をどうこうすることは難しいだろうが、庶民階級であれば容易に罪に問えるのは事実であった。

 

 領主として一見毅然とした対応であったが……よく見ると足が少しだけ震えている。

 

 そのことに相対するルデンツァ伯も多分……気づいている。


「ふっ……」

「ルデンツァ様……?」


 彼は笑みを浮かべたが、それはそんなクレセアを嘲るものではなかった。


「……条件を呑もう。決して悪くない話だ。それに、はじめに無礼を働いたのはこちらなのは明白。行動で詫びたいとは思うが……まずは誠実に会談することを約束しよう」


 ルデンツァ伯は満足そうな表情で振り返り。

 一団とも言える荒くれ者達に、貴族らしい威厳ある声で彼は告げる。


「お前ら。レブレの地に足がついている間はクレセア嬢と俺の言葉は同列とする。もってきたタナイモを出してきてくれ」


 その言葉をきっかけに。

 静寂が支配した港に、威勢の良い声が響き出す。


「しょ、承知しやしたっ!」

「よし、お前らいそげ!」

「二番船と三番船……それから六番と七番船のタナイモを運べっ!」


 屈強な男たちがあっという間に行動をはじめ、


「フォル、美味い飯期待してるぜ!」


 ラデロさんも俺に嬉しそうに声を掛けながら、その流れに混ざっていった。

 その背中をなんとなく見送ると、予想外の人から声がかかった。


「フォル……と言ったか。申し訳ないな、クレセア嬢はもちろんだが……君にも随分と迷惑をかけるようだ」

「え!?あ、ああ……いえいえ!」


 ルデンツァ伯に話しかけられるとは思っておらず、驚きつつなんとか返事をする。

 その様子が可笑しかったのか、隣に立つシオネさんにくすくすと笑われてしまった。


「ラデロから、この機会を逃すと君の作る料理は食べられなくなる、と聞いた。……『タナイモ』以外にも食材が必要だったりはしないか」

「えっ……?」

「やや柄が悪いですが、私達の一団は腕っぷしに自信があるものが多いです。レブレ領内での狩りが必要なら、是非使ってください……ということですよ♡」


 シオネさんが可愛らしい声でルデンツァ伯の言葉を補足した。

 おそらく『飲食税』の影響のことを指しているのだろう。

 非常に有り難い申し出ではあるけれど、俺だけの判断ではなあ……と迷っていると、すぐ後ろから小声で許可が出た。


「……できる限り貴方の能力を見せてあげて。そうすれば互いに可能性がある……」


 クレセアだ。

 まだ詳細は分からないが、俺が美味い料理を出すことで状況は好転する……ということらしい。


 ……そういうことならば、彼らを満足させるのが調理師の役割だ。

 考えたくはないが……これが最後の調理になるかもしれないのだし、精一杯やるまで。


「それなら……」


 最近、欲張るのは得意になった。

 俺は彼らの腕っぷしに期待して、普段なかなか供給されることの無い野生の動物の肉や、ムグの実など色々とお願いをすることにした。 


「――だそうだ」

「ええ、随分と色々ありましたが……承知しました。森もほとんど荒らされていないようですし、彼らであれば充分集められるかと」


 俺の希望を紙に書き付け終えたシオネさんが頷いてみせると、ルデンツァ伯はレブレの鬱蒼と茂る森を見やる。


「……せっかくの『旅行』だしな。俺も探索に加わるとしようか」

「えっ!あ、貴方も行くの!?」

「クレセア嬢、大丈夫だ。怪我をしたからと言って責任を押し付けたりしない。それに、俺も料理を食べさせてもらう一人だからな」


 ちょ、ちょっと!と追いかけようとするクレセアを置き去りに、彼は町を悠然と歩きはじめた。


「でぃ、ディエール!」

「承知しました」


 クレセアが声をかけると、ディエールさんはあっという間にルデンツァ伯の後ろへかけて行く……って速い!?


「彼、一応私の護衛の一人だから……。爺の割には強いのよ?」

「そうなんだ……」


 さすがディエールさん……。

 そして、その様子を見ていたシオネさんが声を上げて手を叩いた。


「皆さん!こちらへ!」


 すると、彼女の周りにルデンツァ伯の一団が綺麗に整列する。

 こうしてみるとやっぱり多いな……。


「調理師のフォルさんから依頼をいただきました。今からこちらを取りにいきますが……」


 と、そこでシオネさんはちらりとクレセアに視線を送る。

 合わせて一斉に男たちの視線も送られた。


「わ、私……?」


 視線を向けられた彼女は戸惑っていたが、やがて意味を理解したらしい。


「……許可します。地域住民に粗相のないように」

「「「承知しましたっ!」」」


 一斉に動き出す一団。

 なるほど……ルデンツァ伯と同じ扱いをしろって言ってたからか……。


 つまり今現時点では、彼らにとってはクレセアが頂点でもあるわけで。

 彼女の許可を待っていたというわけだ。

 それでは、と言ってシオネさんも彼らに同行していった。



「おいおい……随分なことになったな!フォル!」

「なんだか大騒ぎじゃったのお」



 一団の動きに目を奪われていると、後ろから聞こえてきたのはタナーとカグハの声。


「凄い人だかりで、中々近づけんかったんじゃ。って今も随分野次馬がおるな」

「まあレブレの町にこんなたくさん船が来ることはないしな。気持ちはわかるぜ」


 やれやれ、と言った様子で近づいてきた二人に、ここまでの事情を説明する。


「――ってわけで。昨日の『スープ』を出してみようかと」

「なるほどな、良いと思うぜ。その『タナイモ』だっけか。フォルが合うだろうってんなら間違いねえだろ」

「途中で妾もつまむからの、おかしければ言うのじゃ!」


 ついにつまみ食いを遠慮しなくなったカグハに思わず苦笑してしまう。

 

「ただよ、クレセア。今から作るとなると相当時間かかるぞ?」

「それはそうでしょうね。遅めの昼食ってとこかしら」


 ……いや……まずい!


「遅めの夕食どころじゃ済まない……!材料は足りてるけれど……そもそも調理器具が足りないし……」


 しまった……完全に失念していた。

 ここは雲海の下ではない。

 手慣れた火の魔法はつかえない上、物量がとてつもない。

 

 人手も道具も足りないどころの騒ぎではない……!


「う、嘘……じゃあ彼らに夜まで待ってもらうってこと……?さすがにそれは……」


 でも私も気づくべきだったわね……とクレセアが頭を抱えた時、複数の足音とともに意外な人がやってきた。



「何が足りないんだい?言ってみくれ」

「モビッリさん!!」



 声をかけてくれたのはモビッリさん。

 同行しているのは壮年の男性が数人、恐らく『商組合』の方々だろう。


「クレセア領主、お目にかかるのは随分と久しぶりです」


 と、片膝を付き礼を取ろうとする彼らをクレセアは慌てて止める。


「や、やめてったら……!そういうのはまともな貴族にするものよ……」


 照れたようにするクレセアにタナーとカグハが笑う。


「妾達もやったほうがよかったのか?」

「ははは!まだ一回もやったことねえな!」

「そういえばそうだった……やったほうがいい?」


 うるさい!と俺達を叱りつけると、彼女はモビッリさん達に身体を向ける。


「え、ええと……それで何かしら。ごめんなさい、見ていたとは思うけど……今ちょっと慌てていて……」


 モビッリさん達はそんなクレセアに、優しい表情を浮かべる。


「わかっています。何か足りない、ということでお困りの様子。フォルくん、タナーくん、カグハちゃん。一体何が足りないんだい?」

「ちゃ、ちゃんはやめろと言うとるのに……」


 未だ納得がいかないらしいカグハはともかく。

 俺達は現状を説明する。


「熱道具も足りないし……もっと言えばうつわ類も足りません。人手も欲しいんです!」

「なるほど……あの人数を相手にするんだ、当然だね」


 うんうん、とモビッリさんは頷くと、同行している男性たちに指示を出し始めた。


「ひとまず弁当屋の人間には手を貸してもらおう。それから、熱道具を借りられる家や店があればタナーくんに取り外してもらって、ここまで持ってこさせたらどうだい?」

「そうだな……。うむ、では私は弁当屋のほうだな」

「わかった、私は熱道具のほうをあたってみる。タナーくん、一緒に見て回ってもらってもいいかい?私は専門じゃないからな……」


 当たり前のように彼らが協力してくれようとすることに、俺達はぽかんとしてしまう。

 そしてそれを言葉にしようとしたのはクレセアだった。


「え、えっと……手伝って……くれるの?」


 感謝より戸惑いが遥かに上回った彼女の声色に、モビッリさん達は照れくさそうに笑った。


「もちろん」

「で、でも私……その……!」


 なおも言い募るクレセア。

 おそらく今までの領主としての振る舞いを気にしているんだろう、と思う。


 しかし気の良いおじさん達は首を振った。


「『ここはレブレ領民の土地』そう大きな声で宣言してくれる領主様を、私は産まれて初めてみました」


 モビッリさんのその言葉に、他の二人も言葉を続ける。


「ああ。若いのに豪胆で立派な振る舞いだった。あれだけやらせておいて、俺達年配がなんにもしないわけにはいかない、そう思ったんだ」

「領主様が言ったように、ここは我らの土地だ。若いもの達だけに任せたままとはあまりに情けない……そう思うのが年寄りというものでしてな」


 『商組合』の二人はばつが悪そうに笑みを浮かべた。


「ありがとう……!」

「ありがとな、モビッリさん達!」

「感謝します!」

「感心なことじゃな!」


 俺達が――クレセアに至っては涙ぐんで――それぞれ感謝を伝えると、一人はタナーとともに町へ向かい、もう一人は早速弁当屋の人達を呼びに行ってくれた。


「それで領主様、商談とおっしゃっていましたが……勝算はありそうなんですか?」

「そうじゃぞ。あれだけ大きなことを言っておったが、大丈夫なんか?」


 モビッリさんとカグハの言葉にずびびっと鼻をすすったクレセアは、今一度表情を引き締めた。


「おそらく。彼らも『飲食税』で苦しんでいる、居場所を失いそうなほどにね」


 聞けば彼らの特産である『タナイモ』も課税対象だそうだ。

 ディエールさんが事前に集めていた情報で、そのことを知ったらしい。


「彼らの主な収入源はあの『タナイモ』の栽培。だからそれが飲食税を超えて稼げそうで、かつ暮らしていけそうだ、と思わせられれば可能性は十分ある」


 なるほど……。


「俺がタナイモを死ぬ気で美味しい料理にして。お金持ちであるルデンツァ伯に『お金を払ってもいい』と思わせられればいいってこと……か」

「そういうこと。わかりやすいでしょう?」


 随分簡単に言ってくれるなあ……。


 とは思ったが、見返した彼女の瞳は不安そうに揺れていた。

 ……だから俺は自分に言い聞かせる意味も込めて、大きく出ることにした。



「意地でも美味しいって言わせてみせる」



 クレセアの目を見つめて言うと、彼女は心底嬉しそうに笑みを見せ。



「意地でも金をふんだくってやるわ」



 お嬢様、という印象とはかけ離れた暴言を放った。




 そして……そこからはもはや戦争であった。



 戦場は当初の予定のノアの甲板では無くなり。

 港から少し離れた草原で開戦となった。


 それもそのはず。

 もてなす相手も、その準備をする人数も想定を遥かに上回ることになったからである。


「フォルの坊主っ!ムグの実はこっちでいいのか!?」

「あ、はいっ!カグハ、それどんどん熱道具にかけてくれ!」

「わかったのじゃ!」


 ルデンツァ伯の一団から大量に持ち込まれるムグの実を、次から次へと即席のグラノにしていき。

 

「イテル水と、スープ用の水!持ってきたぞっ!」

「タナー!助かる!こっちの熱道具も調子が悪いんだ、整備もお願いしてもいい?」

「任しとけ!」


 ウェクルで飛び回るタナーに、熱道具に使うイテル水とスープの水をかき集めてもらい。


「ふぉ、フォル!?タナイモってこれでいいの!?」

「クレセアが皮むきをやると……イモがものすごく小さくなるよね……」

「ふふ、じゃあ私がやりましょうか?」

「シオネさん!さ、流石に上手ですね……!」

「ぐ、ぐぬぬ……!」


 あんまり使いものにならないクレセアを、シオネさんが手助けしてくれたり。


「フォルちゃんっ、こっちのスープ出せそうよ!」

「ありがとうございます!器はっ?モビッリさん、器あります!?」

「あるよ―!丁度追加が来たところだよ!」

「では配膳は私がやりましょう」


 タナーのご両親にもスープを手伝ってもらい、ディエールさんに配膳をお願いした。


 こうして。

 とにかく料理を徹底して振る舞い続けた。



 素材を持ってくる者。

 それを調理する者。

 出来上がったものを提供する者。


――そして、美味しそうにそれを平らげる者。



 レブレ領の大事件は、気づけば地域総出のお祭りに代わり。

 昼頃に始まった大騒ぎは、結局星が瞬く時間まで続いた。



 その間、俺は。

 無我夢中で手を動かし、指示を出しながらずっと喜びを噛み締めていた。


 自分が作るもので、誰かが喜んでくれて。

 その輪が信じられないくらい沢山の人を囲んでいる。


 そんな景色を見れるだなんて。

 帰郷した時には思ってもみなかった。


 これほどまでに思い切り、美味しいものを提供していい日が来るなんて。

 だから途中から俺は、笑い泣きでぐしゃぐしゃになりながら手を動かしていた気がする。

 調理師としては褒められたことじゃないんだけれど……。



 けれど、同時にそれでも満足できない自分がいた。

 

 その理由は結局。


 

 『蒸気機関と一緒にならない』と決めた技師。

 『人生を謳歌せよ』と寂しげな横顔を見せた神様。

 『もう少し自信を持って』と不安そうに瞳を揺らす領主。



 彼らのことが、俺にとってかけがえのない存在になっていて。

 その笑顔を見るまでは納得できないほどに、俺が欲張りになったからだと。


 最後の一皿を手渡して草原に倒れる時。

 俺はそのことをようやく自覚した。

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