第3話 雲海の下

 『料理』という文化に出会ったのは、まだ両親が生きていた頃。

 母の友人一家がレブレ領に遊びにきたことがあった。


 レブレならではの長閑のどかさ、緑の豊かさを満喫した彼らが絶句したのは食卓でのこと。


「信じられない……!」


 塩気の強いペッシェ以外が並ばない、そのあまりの貧相さに対しての反応であった。


 歯に衣着せない彼ら――特にその娘が強烈だった――は、まずはペッシェの味付けや、焼き方に対して色々と助言をしてくれた。


 そしてこの件以来、我が家は食事に気を使うようになり、気がつけば食卓は家族が試行錯誤する時間となっていった。

タナーが俺の家のペッシェが美味い、と言っていたのもこういった事情があったからである。


 ああでもない、こうでもないと言いながら、実験的な食事を楽しむ。

 失敗作を「美味しくない!」と笑ったあの日も、大切な家族の思い出だ。 


 両親が病でこの世を去ってしまった後。

 俺はそんな食卓の時間が、何よりも暖かい記憶になっていることに気づいた。


 だからそんな時間を無かったことにしたくない。

 これから出会って親しくなった人とも、暖かい食卓を囲みたい。

 

 家族のぬくもりを過去のものと割り切れなかったからこそ。

 俺は『料理』という文化を広めたいと、強く思うようになっていった。


 しかし、それが俺のような庶民には荷が重いことが分かったのはすぐのことだった。



「食事を作業にせよ」



 レブレ領も属する『アケル院国いんこく』。

 その『首都ロドラ』にある調理組合という組織に所属し、派遣調理師になった時。

 最初の上司が掲げた言葉だ。



「重要なことは安く、素早く作れて、すぐに食べられることだ。労働者にはそれが一番受ける」


 

 時代は蒸気の力で動かす機械が次々開発され、『イテル革命』と呼ばれる技術改革真っ只中。

 首都ロドラはそのうねりの中心地だ。


 『イテル水』を動力にした蒸気機関は、人にできない様々なことを可能にしたが、それを保守点検したり、その生産速度を維持するために多くの人手も必要とした。

 慢性的な人手不足も手伝い、彼ら一人ひとりの労働時間も伸びる一方なのが現実だった。


 派遣調理師は、そんな彼らの仕事場におもむき食事を提供するのが仕事。


「彼らにとっては手間こそ悪なのだ。食事をする時間が増せば、それは生産性の低下に繋がる。ひいては国の足を引っ張ることになる。だからな……」


 上司の朝礼の言葉は大抵この言葉で締め括られた。



「食事という行動を限りなく無くすこと、それが我々の仕事だ」



 そしてこの思想は労働者だけではなかった。

 時間とお金に余裕があるはずの貴族達ですら『食欲は悪』とした。

 

 生産性が全て。

 倒れない程度の食があればいい。

 レブレから意気込んでロドラへ来た俺は、そこでようやく現実を見た。


 かつて囲めたはずの暖かな食卓の思い出は、蒸気と労働が支配するこの国では「悪」だったんだって。




――ッ――……――ル――お……――ォル――




「おい!フォル!」

「……!」


 肩を強く叩かれていることに気づき、目を開く。

 

「う……ううん……?」


 眼前に現れたのは心配そうな表情のタナーだった。


「大丈夫か?」

「あ、ああ……」


 確か、物凄い勢いでノアが落下して……。


「仲良く死んじゃったのか……」

「あの世はもうちょっと良いところだと信じてるぞ、俺は」


 彼は俺から顔を離し、どっかりと座り込んだ。


 周囲を確認すると、そこはノアの食堂であった。

 意識を失う前に見た計器類はそのままのようだが、その針の動きは止まっている。


 俺はそんなノアの床に倒れ込んだまま、しばらく目を覚まさなかったらしい。


「見てみろよ」


 食堂とつながった操舵室のほうを指差すタナー。

 身体をおこし、そちらへ行ってみると。



 一面に広がる美しい湖と、林、草原が目に入った。

 


「お、おお……」


 その景色に思わず感嘆の声を上げてしまう。


「どうやら雲海の下ってのは、死の世界ってわけじゃなさそうだ」

「……ああ」


 雲海の上の世界よりも生気に満ちているようにすら感じるかもしれない。


 湖の周囲には見たこともない木々が立ち並び、その湖面にはまるで鏡のようにそれらの景色が映り込んでいる。

 はっきりと映しだされる正反対の世界を見ていると、自分が宙に浮かんでいるようにさえ感じられた。


 辺りにはどこかで見たような輝く緑色の粒のようなものが飛んでいて、差し込む陽射しがそれらを照らし出す。


「雲海の下……だよな?」

「ううん……多分」


 その疑問ももっともだ。

 ここが雲海の下であるなら、真っ白な雲海が空を覆っているはず。

 しかしそんな様子は少しもなく、澄み渡るような青色の空が広がっていた。


「……綺麗だ……」

 

 遠浅とおあさの湖の手前に広がるのは、見たこともない美しい花が咲く草原だ。

 その草も普段目にしたことがない青く透き通る不思議なものだった。


「ああ……幼女達と遠足に来たいくらいな」

「感想が酷い!?」

「失礼な、思ったことを言ったまでだ」

「尚更だよ!」


 幻想的にすら見える景色を前に、あまりに俗っぽい感想……。

 軸がぶれなさすぎて心配になるほどである。


「はあ……これはつまり……着陸したってこと?」

「多分な。そもそも雲海の下に陸があったってのも驚きだが、ノアに大きく損傷はないみたいだし……おそらく着地したんだろう」


 何しろ始原樹の根は宙空に浮いている、という説が一般的なのだ。

 まさか大地があったとは思いもしなかった。


「浮上して戻るってできない?」

「そう思ったんだが……」


 タナーは首を横に振る。


「みたところ、計器類も全然動いてねえ。それに派手に落っこちてきたのは間違いなさそうだ」


 操舵室のガラス製の開口部から上を見るが、そこは空が広がっているようにしか見えなかった。

 真っ白な雲海の下へ落ちたのに、それらは一体どこへ行ったのだろうか……。


「レブレ領の影すらないね……」

「正直どんな位置に落ちたのかもわからん。おそらく変形して出てきた推進機が足の代わりになって着地したんだと思うが……」


 ノアの模型の入ったガラス瓶を指差すタナー。

 そこに視線を映すと、模型は船体から丸っこい足が生えたような形になっている。


「推進機が地上に直撃してるはずだ。無理に動かして爆発でもしたら目も当てられねえ」

「とりあえず、外に出て船がどんな状態なのか見ないとってことか」


 俺の言葉にタナーは頷き、付け加えた。


「この瓶の中の模型が、本当にノアの様子を写してるのかも確認しないとな」


 確かにそのとおり。

 とはいえ。


「……」


 正直怖い。

 何しろ雲海の下に来たのも見たのも生まれて初めてだ。

 いくら綺麗な景色とはいえ、わーい!と飛び出せるほどの度胸はない。


「な、何ビビってんだよ。キャラバンにも派遣されたことあるんだろ……?」

「た、確かに一つ前の現場はキャラバンだったけど……彼らの度胸を身につけられたわけじゃないんだって……!」


 『キャラバン』というのは数人から数十人の冒険者で構成される。


 腕に覚えがある人間で構成されたキャラバンは、黒曜獣の住処でもある魔窟まくつと言われる洞穴へ入り、短くて数日間、長くてひと月はそこを中心に行動する。

 当然食事も必要になるため、現地で調達したものを最低限食べられるようにするための調理師が同行することになる。


 魔窟はもちろん、その周辺も危険がつきもの。

 調理師にもある程度戦う力も必要とされるが……。


「魔窟周辺だからなんとかなってたんだよな……」

「周辺だとなんか違うのか?」

「まあ、ちょっとね。だから経験もあんまり役に立たないっていうか」


 俺は苦笑しつつ頷く。

 戦闘の達人じゃないのに生き残れたのはその環境のおかげによるところが大きい。


 とはいえ、ぐずぐずしていても状況は好転しない。


「ということで、タナーさん……お、お先にどうぞ?」

「いやいやフォルくん、君こそ最初に堪能してきたらいい。見てみろ、とても美しい景色じゃないか」


 引きつった笑みを向けあうが、すぐに本音が出る。


「い、いいからフォルがいけよ!」

「おいやめろ!お、押すなあ!」


 醜い押し合いの末、転がるように外へでると。

 


「……うわ……!」

「……すげえ……!」



 男二人は息を呑む。

 ガラス窓を通さずに見た景色はやはり美しかった。


 さきほどは聞こえなかった鳥の声……だろうか。

 遠くから生き物の声や、気配が伝わってくる。


 降り立った草原に生える植物は、やはり青く、角度によって少し透き通って見えた。

 輝く緑の細かい粒は穏やかな風に舞い、雲がかかっているはずの空からは波打つような陽光が降り注ぐ。

 

「なんか……思った以上に爽やかだな」


 タナーの声に頷く。

 吹き抜ける風は、レブレから去った冬の気配をほんの少しだけ含んでいるように感じられた。

 

「この感じ……どこかで……」


 しかしその空気は不思議とどこかで感じたことのあるものだった。

 それが一体どこで感じたものだったのか……と考えをせていると……



「お、おい!?あれ見ろ……!!」



 タナーが大きな声を上げ、俺の肩を引っ張る。

 半ば強制的に振り向いた方向には、黒く光る四足の獣の姿。


「こ、黒曜獣……!?」


 想像以上に浅い湖に立つその獣は、うっすらと黒く見える空気を纏っている。

 草原に住む虎、緑虎りょくこと形は似ているが、その見た目と威圧感はまるで違う。

 それは、キャラバンに同行していた時に感じたものと同じ。

 

 間違いない……黒曜獣だ。


「どうしてこんなとこに黒曜獣が……あれは魔窟の回りにしかでねえんだろ!?むしろレブレに居なくて困ってたはずじゃなかったか!?」

「た、確かにそのはずだけど……」


 黒曜獣が出ないことが、過疎化の最大の要因でもあったはずなのだ。

 しかし目の前にはその黒曜獣がたしかに存在する。


 ゆっくりと湖から近づいてくる黒曜獣から目を離さないようにしつつ、俺はなぜ感じたことのある空気だったのかを理解した。


「ここの空気、魔窟とそっくりなんだ……!」

「嘘だろ……!?ってことは俺達、雲海の下じゃなくて魔窟に落ちたのか……!?」


 とはいえキャラバンに同行した時に見た魔窟とは似ても似つかない景色だ。

 正直なにがなんだか分からないが……。


「……考えてる時間はないか……!」


 そうこうしているうちに黒曜獣は一歩一歩こちらへ近づいてくる。

 おそらく攻撃対象として認識されたのだろう。


「し、しかたねえ……!こ、これでなんとか追っ払おうぜ……!」


 タナーは素早くノアへ引っ込み、機械調整の際に使う工具を手に持ってでてきた。

 俺には干物を作る際に使う小さな包丁を持ってきてくれたらしい。

 どうやらノアの中にあったものらしく、ところどころ錆びついている。

 

「ノアを見に来いって誘ったのは俺だ。となればこの事態の原因は俺にある」


 彼はそう言いながら俺と、黒曜獣の間に入った。

 黒光りする獣はその様子を見て、ぴたりと足を止める。


「後ろよく見てみろ」

「後ろ……?」


 俺はそこでノアを降りて以降、初めて後ろを振り返った。


 そして目に飛び込んできたのは壁。


「あ、あれって……!」


 いや、違う。



 それは計り知れないほど大きな大樹であった。



 天をつくかのように伸びる幹。

 とてつもなく太いそれは、視界の端から端までを埋め尽くすかのようだ。


 まるで世界が始まった時からあったと主張するかのような威容。


「始原樹……!」

「魔窟って洞穴のはずだよな。と考えればここは違うんじゃないか?」


 確かに。

 考えられる可能性としては、近くに大きな魔窟がある……くらいだろうか。


「見た所こいつ一匹。そこの森みたいな場所から離れられれば、まだ可能性はある」


 始原樹の周りには鬱蒼とした森が広がっている。

 魔窟があるとすればあの中だろう。


 だから森から離れれば黒曜獣と出会う可能性は低くなるのは間違いない。


「俺がこいつを引きつけて森のほうへ行く。お前はその間にイテル水が湧いている場所が無いか探しに行ってくれ。湖もある……どっかに川があるかもしれん」

「わかっ……ってタナーはその後どうするんだよ!」


 さっきも言っただろ、と彼は口元にだけ笑みを浮かべた。


「不慮の事態が重なったとはいえ、巻き込んだのは俺だ。危険なほうは俺が引き受けないと格好がつかないだろ。浮上するにもイテル水は必須だしな」

「い、いや持ってるのが工具の時点で……」

「仕方ねえだろ!?これしかねえんだから!」


 格好はついてはいないが、彼の気持ちを無駄にはしたくない。

 そしてこの状況なら……。


「ちょっと賭けにはなるけど、一匹なら手はある……」

「ほ、ほんとか……!?」


 お互い黒曜獣から目を離さないようにしつつ、小声で会話を続ける。

 

「一瞬でもいいから奴の気を引いてほしい。工具を投げるか、全力で走るか……」

「お、俺がか?」


 タナーが少し怯えたような声を出す。


「あの種類、四足のやつは早く動くものに注意が向くらしいんだ。キャラバンにいた頃に教わった」

「そうなのか……。で、お前はどうするんだ?ま、まさか逃げないよな?な?」

「格好がどうたらってのはなんだったんだ……」


 しらねえ、とあっさり前言を撤回した彼の潔さを尊敬しつつ。

 俺はかつて教わった通りに呼吸を整える。


「……『魔法』を使う。魔窟周辺なら使えるように習ったんだ」

「はあ!?お前そんなん使えんのか!?早く使えよ!」


 魔窟と似た空気であることで、使用できることは分かった。

 実際今も、練習した通りにすれば魔法を出せる確信がある。


 しかし。


「料理をする時にしか使ったことがないんだ……」

「は?」

「獣の肉を焼いて食べられるようにする時にしか、使ったことがないんだ……!」


 キャラバンの気のいい連中に習ったのは火を出す魔法。

 それを利用して肉を焼いたら、飛び上がって喜ばれたのだが。


「繊細な火加減には自信があるんだけど、攻撃はちょっと……」

「嘘だろおい……そこまで食べ物馬鹿だとは思わなかったぞ……」


 そこまで話したところで、止まっていたはずの黒曜獣が一歩、また一歩と距離を詰め始めた。


「と、とりあえず全力でぶっ放せ。全力でな……!」


 当然そのつもりだ。

 俺が頷くと、タナーも覚悟を決めたらしい。


「いくぞ……!」


 密やかな声で宣言すると、タナーは黒曜獣に向かって工具を投げつけた。

 

「よしっ……こっちだ黒い奴っ!!」


 青く光る瞳の間、黒曜獣の眉間に見事にあたった工具は湖の浅いところへ落ちる。

 黒い獣は虎のように唸り、完全にタナーを敵と認識した。


 そしてそのまま走り出したタナーに飛びかかろうとし、その横腹が無防備にさらされる。


 ……今だ!!



「お、おらあああっ!!」



 普段は上げたことのない声を出しながら、俺は生まれて初めて思いっきり『魔法』を使った。


 周辺に風がまきおこり、キャラバンの人にもらった右手の指輪に緑の輝きが集まる。

 掌の内側には燃え上がる火の玉が形成されていき、その大きさはどんどんと大きくなっていく。


 やはり空気中に見えた緑の粉は高濃度のイテルだったのだ。

 魔窟の中でも似たような景色に覚えがあった。 


 よし、思ったとおりだ!


 などと、魔法が発動したことに気を良くしたのも束の間。



「え、ちょ!うわあああああ!!!」



――俺の手からは想像とはまったく違う、巨大な火柱が飛んでいった。



「馬鹿野郎っ!!ひいいいいっ!!!」


 そのあまりの大きさに、黒曜獣どころかその近くを走っていたタナーにまで当たりそうになり、彼は浅い湖に身体を投げ出す。


「ゥギャンッ!!??」


 そして黒曜獣はやや不憫にさえ思える悲鳴を最後に炎に呑まれ、一切姿が残らなかった。



 後に残ったのは浅瀬に倒れ込んだタナーと、俺。

 そしてなんとも言えぬ静寂であった。


「おい……そんなでけえの出せるんならはじめからやれ……」

「だ、出せるって分かってたらやってたよ……」


 力加減……というか火加減を考えずに使ったのはこれが初めてなのだ。

 まさかこんなとんでもないのが出せるとは思っても見なかった。


 とはいえ、これで一難去った……。



 ……と思ったのは間違いだったらしい。



「グルル……」

「ギュルル……」



 敵対的な唸り声とともに、今度は後ろの森から黒曜獣が複数現れたからである。


「……お前が派手に……やるから……だ……」

「ふ、不可抗力だって……!っておい!?タナー!?」


 倒れ込んでいた身体を起こして立ち上がろうとしたタナーは、その言葉を吐いた後再び身体を浅瀬に投げ出した。

 

「大丈夫か!?どっか怪我でも……?」


 急いで駆け寄ると、タナーは息をするのも辛そうな様子だ。


「……だ、駄目だ……目眩めまいがひどくて立ってられねえ……」

「目眩……もしかして……!?」


 魔窟に初めて入った人間が必ずなる症状、イテル酔いだ。


「ああ……幼女さえ……幼女さえ見られれば……まだ戦える……」

「黙ってろ変態!」

 タナーの趣味嗜好がまずいのはともかく。

この状態はとてもよくない。


 『魔法』のような超常の法則を扱えるのも、魔窟の側はイテルが濃いから。


 普通の環境で暮らしている人は、いきなりその濃いイテルに当てられると頭痛や吐き気、目眩といった症状が出る。

 俺もキャラバンに派遣された最初になってしまい、数日間はただのお荷物状態であった。


 タナーも当然こんな環境に置かれるのは初めてだろう。

 幸い俺はキャラバンの経験があるからましではあるが……。


「いや……まずそうだな……眼が……」

「な、なんだ……?フォルもか……?」

「ちょっと張り切り……すぎた、かも……」


 慣れない魔法を思い切り使ったせいだろう。

 視界が霞んできて、身体に力が入らない。


「グルル……!」


 黒曜獣は更に数を増やし続け、今や周囲を取り囲むように集まっている。

 この量を相手にするのは歴戦のキャラバンでも不可能だろう。


 なんとか逃げたいが……。


「ぐっ……う……!」


 俺も浅瀬に膝を付いたきり、ほとんど身体に力が入らない。


「や、やっぱあの世だったな……雲海の……下は……へへ……」

「たしかに……そう……かも……な」


 だらしないお姉様を養いたい……そんな俺の夢も、ついに叶わないらしい。


 そしてあの団らんのぬくもりを伝えることも……。




――随分面倒な闖入者ちんにゅうしゃじゃ。




 全身に力が入らなくなり、浅瀬に倒れ込む直前。


 視界に映ったのは輝くような金髪をたなびかせる人影。

 聞こえたのは古風な口調の女性の声。


 そして青く輝く炎。


 それが俺達を取り囲んだように見えた後。

 俺の意識はそこでぷっつりと途切れたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る