第14話 手詰まり

 コーヒー屋『ぶれえめん』は、モーニングセットを注文する通勤前の客でそこそこ賑わっていました。九時になった途端に電話が鳴って、「はい、ぶれえめんです」と、カウンターの店長さんが受話器を取り上げました。


(あ、こちら、かすみ市のAI機器不法投棄物係なんですが、実は、こちらで保護した、ルンタといういわゆるお掃除ロボットですね、AI搭載の)

「はあ、ルンタですか……」

(ええ、そのルンタの中からお宅さまのレシートが出てきましてね。なにかお心当たりが無いかと……)

「いやあ、ちょっとわかりませんねえ。ウチのものではないですし……。お客さんのだとしてもわかりかねます。あ、すいません」

 店長は、新しく入って来た二人の客に「いらっしゃいませ」と声をかけてから、また電話口に向かって「申し訳ないですが、お客さん来ちゃったんで……」と言いました。

(あ、はい。わかりました。どうも、お手間とらせてすみません。失礼します)


「だめっすね」

 茶髪の職員は電話を切って、回転椅子ごと係長の方を向きました。

「うーん、手詰まりかあ」

 係長は残念そうに言いました。

 九時になったので、ルンタは事務所の床を掃除しています。

「状態良さそうなのに、もったいないよなー。ま、諦めて、リセットするか」

「あ、待ってください。ちょっと試したいことが」

 茶髪の職員はニヤッと笑ってから、PCを操作し始めました。

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