第11話 被ばく
……はあ? 何言ってるんだ?
オレは山田が何を言ってるのか理解できなかった。
なぜ、唐突にそんな言葉が出たんだ?
放射線被ばくと言えば、終末世界マニアのオレをして、まず思い浮かべるのが核戦争だ。終末世界の定番だからな。
ガイガーカウンターで汚染地域を避け、水や食料を探したり、ミュータントや無法者と戦ったり。中にはバイクに乗ったモヒカン集団と素手で戦う話もあったな。
たしかに現在は終末世界と言えるだろうが、ジャンル分けするならゾンビものであろう。断じて核戦争ものでない故に、山田の言う「放射線被ばく」というワードに非常に違和感を覚えた。
「いやいやいや、オレ、秘孔突かれたりしてないんだけど?」
オレは思わず素でボケてしまった。
『……ははは、笑えないなあ』
いや、笑ってるだろ。
『お前はもう死んでいる、だったかな? うん、笑えない』
「どういう意味だ?」
オレは思わず、少しムッとした声を出してしまった。
まあ、こちらは真剣に体の調子が悪いんだ。山田のおちゃらけが少々気に障る。
おっといかん。ここは下手に出なければいけない所だった。
オレは気を取り直して、言葉をつづけた。
「……まあ、いいさ。ところで、何を言ってるのかサッパリ理解できないのだが」
『□□町にね、原発あったでしょ? そこね、2カ月くらい前に機能停止したんだけど、知ってたかい?』
「……いや。というか、確かにこのあたりの電気はその頃止まったな」
それがなにか?
『原発が機能停止と言えば、何を連想する?』
ぞわりと鳥肌が立つ。
「まさか……」
いくら世間に疎いオレとは言え、東日本震災のときの福島原発の事故の件くらい覚えている。
そして、その時世間が大騒ぎした健康被害の件もだ。
『うん。メルトダウン。放射性物質がダダ漏れ。君は至近距離と言ってもいい地域に住んでることになるね』
ガクガクと膝が笑う。
と言うことは、この体調の不調は……
「ほ……放射線被ばくってやつなのか?」
『うん。さっき言った通りにね』
オレは膝から崩れ落ちた。
何故、今までその可能性に気付かなかった?
”あの日”以前のオレなら、いくら底辺だったとは言え連想できたはずなのに……。
『実はね、最近になってどんどん原発関連が同様の状態って情報が入っててね。コミュニティごと批難するところも出てるから、すぐピンと来たんだよ』
……そんな情報はどうでもいい。
どうでもいいっ!!
「そんな……、オレはどうなるんだ!」
『そこまで症状が進行しちゃうとね……。言いにくいけど、手遅れってヤツかな。余命も長くはないよ』
「ああぁぁあぁあっ!!!」
オレは絞り出す様に叫ぶしかできなかった。
目の前には、血の混じった唾液が飛び散っていた。
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