第6話 気分はどうだい?w

この荒廃した世界で~♪


バンババン バンババン!


手に入れたのか? 自由~♪


バンババン バンババン!!


好きな時に呑み!

好きな時に抱き!

気に入らねえ奴ぶっ殺す!


あっあ~ あっあっああーあー(ウォゥウォゥ)♪

あっあ~ あっあっああーあー(ウォゥウォゥ)♪


これが これが終末世界

夢にまで見た終末世界

これが 俺の終末世界

両手広げて 抱きしめ~ろ~♪

Get this world!! ババ~ン!


ヘイ ユー! 

ゾンビになった気分はどうだい?

ヘイ ユー!

ゾンビになった気分はどうだい?


あっあ~ あっあっああーあー ウォウウォウ♪

あっあ~ あっあっああーあー♪

あっあ~ あっあっああーあー ウォウウォウ♪

あっあ~ あっあっああーあー♪


Get this world!!


ジャカジャカジャカジャカジャーン♪



……残心。



「……ってのがオレの新曲なのだが、どう思う?」



……あうー



ああ、このクソ野郎は駄目だ。

どうやらオレの作曲センスを理解できないらしい。

まったくもって腹立たしいことに、非常に反応が薄い。


まあ、脳みそ腐りかけのゾンビだしな。

てか、元々このクソ野郎とは音楽の方向性が合わなかったんだ。


ガン!!


オレは手にしたギターで、このクソ野郎の頭を一発ぶん殴ってやった。



語ったことあったかな?

オレの数少ない特技のひとつが自作の歌の弾き語りなのだが、いやはや、終末世界ってのは素晴らしい。

いま手にしてるギターは、店頭のショーケースに200万円くらいで売ってたものを拝借してきたものだ。

“あの日”以前なら、手に触れることすらできなかったであろうシロモノだ。

「試奏させてください」と言っても、にじみ出る貧乏人臭で察っしられて断られることは目に見えてるしな。

だが今では、この高級楽器はオレの楽器兼鈍器として大活躍しているのさ。


暇つぶしに楽器店に寄りコレを回収した後、ふとここ……昔よく通っていたライブバーに立ち寄ってみたのだ。

そうしたらな、このクソ野郎……この店の雇われ店長がゾンビになってウロついていたのさ。



この店なんだけどな。

2年ほど前にオープンしたのだが、交通面でも金銭面でもオレに都合が良いから利用することにしたんだわ。

ただな、この雇われ店長がちょっとイタい野郎でね。歌は音痴、ギターは始めたてに毛が生えた様なレベルのクセに、何を勘違いしたかこの店を始めやがったらしくてな。


下手クソな演奏を聴かされるだけでもイライラしたのだが、それより致命的にこの店がヤバい理由はな、何と言っても音響がクソ酷いって点だ。


どう酷かったかの細かいことはここでは語らないが、オレはわざわざ改善のアドバイスしてやったのだ。

「たった5万円の投資で音響は各段によくなる。アマチュアミュージシャンの店選びで重要なのは何と言っても音響だ」ってな。


そうしたらこいつ……ゴン!(頭を蹴り飛ばした音)、何て言ったと思う?

「うちはミュージシャンはお呼びじゃない。素人がギターを囲んでワイワイするアットホームな店を目指してる」とか、何か知った様なことぬかしやがった。


もう、アホかと!?

その素人って、どうやって店を探し、また飛び込んでくるんだ?


ライブバーなんて、素人からしたらかなり敷居の高い存在だ。

普通はミュージシャンのイベントの際に客として入店してきたりしたときに、「ちょっと歌ってみない?」「え? でも……」「いいからいいから。経験経験♪」みたいな流れから「生音で歌うのって楽しい!」とか「僕も楽器弾いてみたい!」って感じになって初めて個人でも敷居を潜ってくれるようになるもんなのだ。


そんな一種の通過儀礼のようなものもナシで飛び込んでくる素人って、どんなタイプだと思う?

俺が思うに、二種類。

もうどこかのライブバー等で同じような経験を積んできている者か、自分は天才だ的な勘違いでクセの強いクソ面倒臭い輩しかいないだろ?


前者はアマチュアミュージシャンと同様に音響がそれなりに良い環境を好むし、肝心の演者がド下手では興覚めだから二度と来ない。

後者は根拠不明の自信とプライドにより謎の上から目線で他客にとってウザい存在になるので結果店にマイナスと、ロクなことが無いに決まってるのだ。


オレはこの店主では話にならんわってことで、よくこの店に顔を出す、店のオーナーに直接音響の必要性を説いたのよ。

そうしたら翌週、オレが言っていた機材が入った。

各段に音響は良くなったねw

そら見ろと、ドヤってやったわ。


それが決定的に気にくわなかったんだろうな。

「もうオマエは来なくていい」……要するに出禁を宣言されたのさ。

オーナーはまた来ればいいと言ってくれたんだけどな。

このアホが店長のうちは来ませんわーって感じで疎遠なった経緯がある。


笑えるのは、翌日の某SNSでこのクソ店主、「音響が生まれ変わりました!」とかアピールしてやがんの。

あれあれ? 音 響 ど う で も い い ん じゃ な かっ た ん で す か (笑)


……ま、こんなド素人運営なんで、案の定、半年経たずに潰れたんだけどな、この店(爆笑)



まあ、何はともあれ、近くを通りかかったのもあってこの店によってみたんだけどな。

もう別の飲食店に変わっちまってるってのに、このクソ野郎がウロウロしてたんで笑えるわw

雇われのクセにやけに店に執着するヤローだとは思っていたが、ゾンビになってまでとは、ましてや店が無くなってまでここにいるとは、全く恐れ入る野郎だぜ。


そして、オレは店主を簀巻きにして床に転がした後、オレの新曲を聴かせてやったってワケだ。

……なんか昔語りをしたら、また腹が立ってきたな。

もう一発殴っとくか。


ガン!(ボキッ!)


あ。

ギターヘッド折れた。

……まー、いいか。


あ。

クソ店長の頭の骨ヘッドも折れてら。


……まー、いいか(笑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る