あぽがれ！ ~憧れのポストアポカリプス

第5話 ゴミクズのお食事事情

意外に思うかもしれんけど、オレの終末生活は結構快適である。

拠点だって超高級高層マンションの一室を占拠してるしな。

そこの元住人がゾンビ化してたので、簀巻きした後にベランダからアイキャンフライしてもらったわ。

いつぞやのオナホゾンビと同じ感じだな。

今のオマエにゃあこの部屋はもったいねえよ。

このマンション、全室の電力ををある程度まかなえる太陽電池と燃料発電併用の自家発電設備があるんだよね。

最悪はそれを独り占めできるので設備が故障するまではやっていけると思うのだが、なんといまだに通常電力が供給されてきている地域のようで、考えなしに電気が使えるところが素晴らしい。

一般常識に欠けるオレだから地理には疎かったりするのだが、たしかこの辺りは原発があったんじゃないかな？

まあいつ止まっちまうかは知らないけど、それまでは贅沢に暮らさせてもらうとしよう。

あと、食事事情も悪くはないぜ。

メシがレトルトか缶詰がメインってところが少々不満なんだけど、最近のは結構旨いしね。

時間だけはたっぷりあるので、暇な時は車飛ばしてちょっと遠出して、道の駅なんかで売ってたご当地グルメのレトルトや缶詰を拝借している。

お題代わりとして、フラついてるご当地ゾンビ数体の頭を金属バットのフルスイングで駆除しておく。

オレはなんて律儀な男なんだろうとしみじみ思うぜ。

何はともあれ、色々工夫してメシのバリエーションを豊富に保ってるのだ。

そりゃ新鮮な肉とか食べたいとは思うが、これでも”あの日”よりかなりマシな食生活をしている。

贅沢は言うまい。

底辺サラリーマン……もう盛るのはやめる。底辺派遣社員のオレにとって、食とは充実させるものではなく切り詰めるものだっからな。

お蔭で目に見えて太ってしまった。

今となっては他人の目を気にする必要はないのでよいのだが、このご時世、病気になったりいざという時体が言うこと聞かないじゃあ話にならないからな。

健康第一。

薬局で手に入れた食前、食中、食後に飲むものから腸内細菌サポート、代謝を上げるもの、黒酢に酵素。”あの日”以前なら手にすることもできなかったであろうありとあらゆるクソ高いダイエット健康食品を駆使し、健康維持に勤しんでいいるってワケさ。

飲み物だって基本はダイエットコーラなんだぜ！

ダイエットコーラと言えば、昔読んだ雑誌か何かでダイエットコーラを愛飲する者のほうがデブが多いからダイエットコーラに入っている成分は肥満の元である。痩せたければ飲むな！……みたいな記事を見かけたが、オレがデブになりかけて理解できたぜ。

そうじゃなくて、デブが悪あがきにダイエットコーラ選んで消費しまくるからその結果になるんだよ。

アホか（笑）

全く、こんな低レベルなことをドヤ顔で発表してればカネがもらえるんだから、エリート様は人生イージーモードだったろうな。

今となってはご愁傷様だけどな（笑）

……話が逸れたが、オレなりに健康については涙ぐましい努力をしてるってことさ。

効果は、よくわからん。

とにもかくにも、だ。

このご時世、メシに困ってる生存者はいないと思うぞ。

生存者の頭数に対し、食糧のほうが圧倒的に供給過多状態だからな。

おそらく、食い尽くしてしまうより消費期限が切れて腐らせるのが先だと思うぜ。

まあ、レトルト関係はもってあと１、２年。缶詰は３、４年。保存食が５～８年ってところみたいだから、どこかのタイミングで自給自足を考えないと生きていけなくはなるけどな。

知識もやる気もないオレが自給自足とか無理ゲーっぽいけど、まあ、その時になったら考えるわ。

自給自足のシステムが出来上がってるコミュニティに擦り寄るとかさ。

時々思い出したかのように遠方の生存者コミュニティと無線で連絡するんだけど、あいつらお人よしでね。

いまはお袋が弱ってて動けないから合流できないってオレの嘘を信じてやんの（笑）

適当に良いヤツ演じて縁を繋げとけば、何とかなるかもな。

……まあ、また他人と関係しなければならないと思うと乗り気にはなりきれんけど。

最悪にっちもさっちも行かなくなったら首でも吊ればいいんじゃないかとかも割と本気で考えてるし。

ゾンビはもう人じゃねえって感じでバンバン殺ってきたけどさ、人の姿してるもんをぶん殴るのに慣れ過ぎちまったのか、今ならフツーの人間だって気に入らなければ迷いなく殺れる気がするんだよね。

最近、命の価値ってのがよく分からなくなってきたぜ。

オレ自身の命も含めてな。

ゴミクズだぜ、まったく。