第4話 今日は焼肉よ~♪

今回は、ゾンビの習性をちょっとだけ教えてやる。


ゾンビは昼間はほとんど徘徊しない。

特に直射日光は避ける傾向がある。何故かは知らんけどな。

大体は日陰になる場所に引っ込む。

そんな場所にバッタリ出くわさない限り、昼間は比較的安全な時間帯だな。

物資調達とかするならここだね。


あと珍しい習性として、極まれな個体なのだが、生前の生活習慣を意味もなく繰り返すヤツがいるのだ。


先程昼間は日陰に引っ込むと言ったが、帰巣本能でもあるのだろうか、多くの個体が”あの日”以前に住んでいた家や部屋に戻るっぽい。

知らないところのドアとかを開けれるような知能も無いゾンビではあるが、自宅のドアを開けたり閉めたりできるのは生活習慣レベルで染みついた行為だからかもしれんな。


ただ、もっと高度なことをする個体も存在する。

オレの目の前にいるヤツがそれに当たる。


こいつは”あの日”以前によく通った個人経営の焼肉居酒屋の店主だ。

ある日、酔っ払ったときにツケて帰ったツケてないみたいな話から大喧嘩になり、それから夜の街で偶発的に顔を合わせる度に喧嘩に発展するくらい険悪な仲になっちまったんだよな。

今思い出してもムカムカするぜ。


”あの日”までは、折角楽しく呑んでるところを台無しにされるのでムカついていたし顔も見たくない存在だったのだが、今ではオレが勝者生存者でヤツは敗者ゾンビ。こんな風に再会できるとは神様も乙なことをしてくれたモンだぜ。


ヤツは自宅に帰るという習慣より、店に立つという習慣を優先させたようだ。

ゾンビになってまで職場に執着とは恐れ入る商売人根性だな。

全く反吐が出るぜ。

オレは仕事にプライドを持つ輩がいちばん嫌いなんだよ。

社畜時代の大卒エリート共を思い出すぜ。

……まあコイツの場合は前科持ちムショ暮らし経験アリな上にバツ2だったはずだから、帰る家がどこか混乱しちまってるだけかもしれんが(笑)



この店はホルモンが自慢の店だったな。

オレはヤツを抵抗できないように縛り上げると、ヤツ愛用のまな板の前にケツを蹴り飛ばしながら連行する。

そしてヤツ愛用の牛刀をヤツの腹に突き立て、横一文字に切り裂いてやった。


はらわたがまな板にぶちまけられる。


肉体の損傷に大量出血ときたがゾンビ故に即死はない。ただ失血からか抵抗もなくなりボー然と立ち尽くすヤツの拘束を牛刀を使って解き、その牛刀をヤツの目の前に投げる。


「ほら、オマエ自慢のホルモンだぜ」


ヤツは牛刀に手を伸ばし、ゆっくりと自分のホルモンを処理するような動きを始めた。


「ははははははっ!! ウケるし!!」


オレはそんな光景を見ながら腹を抱えて大爆笑をする。

こんなに痛快な思いをしたのは人生初と言ってもいいかもしれない。

本当に良い時代になったもんだぜ。神様本当にありがとな!(笑)


「ひーっ!! 苦しいw」


脈は普通の人間の10分の1くらいのゾンビであるが、ここまで重症であればそう長くない時間で失血死して動きを止めることであろう。

そこまで楽しく見届けてから、オレはヤツを大切な店ごと焼き払うつもりである。


焼肉バーベキューいっちょあがりってな。

ははははははははは(笑)

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