第8話

家に入り、とにかくキッチンテーブルの椅子に座る。あ~、なんか疲れた!まだそんなに遅くはないけど、もうとにかく寝よう。  そんな事を思っているとY−警察署から電話がかかってきた。今日の事で、小松菜の治療費の事で明日そちらへ伺います、と。手短に言われてアッと言う間に切った。確か明日、来る前に電話をかけるとも言った気がした。                  だが翌日の朝の10時に、ピンポーン!、とドアベルが鳴る。エッ、もう来たの?だって電話も無いし。二階の窓から覗く。中年の男が二人、カーゲートの前に立っている。一人が上を向き、顔が会ってしまった。    仕方がないから犬達が庭に出ない様に家の中の他の部屋に入れ、そのドアを閉めて  から、ドアを開けてカーゲートの方へ行く。厳しい顔をしながら、二人が私を見る。  「Y−警察です。」            片方の男が言う。この時は普通の表情になる.私は「はい。」、と言いながらカーゲートを開けた。もう片方の男は無言で私を、 先程の険しい、凄い顔でジーッと睨みつけている。丸で怒って唸っているブルドッグだ!体もブルドッグの様に太い。余りにもいつまでもそんな顔で睨みつけるので、驚いて何度か見てしまった位だ!           もう片方はごく普通の体型で、白髪混じりの髪で眼鏡をかけている。そしてこの男がそのまま話し続けた。要は、小松菜は耳を13針縫い、傷は深さ5センチに達していたと。耳の裏側を斜めに5センチ歯が入ったのだ。(後から病院の診療明細書を二人がもらい、そのコピーを私がもらったが、こう記してある。創傷処理、臓器に達するもの・長径5cm以上10cm未満・真皮縫合、と。)   そして、小松菜は狂犬病の事を恐れているからと言われたので、ちゃんとに注射は打ってあると答えた。すると二人共ニコニコし出した。この時は怒り顔のブルもやっと笑顔になった。                 「じゃあねー、大丈夫ですねー!」、   「そうですねー!!」          二人がそんな風な事を言って喜んだ。   そして、その治療代を払ってほしいから今すぐに一緒に病院ヘ行ってほしい、と言われた。                  「今直ぐにですか?!」         「はい、お願いします。」         治療代は役8万円だそうだ。そしてその日は日曜日。経費で落ちないのかと聞いたが駄目で落ちないとの事。           私は現金で8万円も持っていない。まさか 翌日に払わされるとは思っていなかった。金額を知らされ、後日払うのかと思っていたから。だが今そのお金はないと言うと、最寄りの近くの銀行で降ろせば良い、とせかされる。そして私はカードや通帳を持って来る様に促されて家に入り、用意して出て来た。 そしてこの男達と共に、バンに乗せられた。何処の銀行かと聞かれたので、直ぐ近くの横浜銀行のATMを教えた。それで、そこの近くに車を止めると中で待つと言われ、私だけ下り、私は仕方無くお金を下ろしに行った。平日まで待っても良かったんでは?何でこんなにバタバタ急がせるの?!そう思いながら。                  お金を下ろして戻ると、急いでみなと赤十字病院へと車は走る。車中、二人は無言だ。何か落ち着かない、嫌な間だ。私は思い切って話しかけた。              「でも、大した事なくて良かったです。」  二人がピリッと凍り付いた様に感じた。  急いで付け足した。           「あの、だからちゃんとに耳があって、ちぎれたりとか、耳の中までとかじゃなくて。」                「ああ、そうですよねー!僕も本当にそう思いますよ。」               運転中の、どちらかというと優しそうな眼鏡の方がそう言うと、もう片方のブルも同感だと言う風に横で頷いた。         私は後部座席に一人座り、二人は前に座っている。                 車が病院について、私達は日曜日の為に裏の入口から中へ入って行った。       続く…

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