第4話
私は先に歩き出した。小松菜が付いて来る。そして、後に付いて来ながら、心配そうに何度も尋ねる。 「ねー、犬ちゃんとに入ってるんだよね?ねー、ちゃんとに犬、入れ物に入ってるの?大丈夫?!」 「うん、大丈夫。」 「本当?本当に大丈夫なの?」 「うん。大丈夫だよ。」 私は普段、誰かが家に上がる時は、犬達をバリケンネルに入れている。年老いた小型犬以外は。(だから、家の中に入る人間がこうしている今、犬達は当然入っているんだ。特に、雄の大型犬は!絶対にそう!)心の中でそう確信する。 私はカーゲートを開けて中に入り、小松菜も入ると、それを勢いよく締めた。バチンと強い音がした。次に鍵をポケットから出し、鍵穴へ差し込む。回す。小松菜は私よりも少し下がって、斜め後ろに立っている。 ドアを開けた。その瞬間、私の、丁度男盛りの雄のジャーマンシェパードが嬉しそうに飛び出して来た!心配で、ずっと玄関に張り付いていたらしい。私を見て嬉しそうに尻尾を振っている。だが直ぐに、あれ?と言った風に鼻をひくつかせて見廻す。小松菜の匂いを嗅いだのだ。 「アッ!入れてなかった!!間違えちゃった?!」 何しろ、一応は普通だが、かなりの酒を飲んでいる。だから、人が家に入るイコール犬達はバリケンの中だと錯覚してしまったのだ。 私の犬は小松菜の方を見ながら,う〜っと低く唸った。そして近づいて行った。 やだ、まずい!! 私は大声で名前を呼んで、家の中に入れようとした。だが小松菜がその瞬間走った!逃げて行く。四角い、車が一台入り、自転車も停められるスペースを、小松菜は焦りながら走り、家のドアに手を掛けて開けようとした。私は叫んだ。 「駄目!中にもう一匹いる!!」 小松菜はもの凄い焦り顔で踵を返した。そして走り、急いでカーゲートの取っ手を掴み、開けようとした。だが、私の犬は直ぐに後ろに来た。 「動かないで!!」 私は又大声で叫んだ。小松菜は動きを止めて静止した。 我が犬はワンワンと小松菜に向かい、吠え始めた。小松菜はジッとしている。私は犬の名を呼び、叱った。それで彼は静かにそのまま、お座りをした。私はとにかく早くに彼を家の中に入れようとした。 だがその時だ。小松菜がホッとした安堵の顔付きをしたのだ。もう大丈夫だ、と言う風に。すると彼はその様子に気付き、又吠え始めた。そして立ち上がり、そのまま吠える。小松菜の顔色が変わった。又、緊張した焦り顔になった。 そしてその瞬間、もう我慢できないと言った風に、我が犬は後ろ足で立ち上がると、小松菜の耳元で又激しく吠え始め、そして一瞬ためらった様に見えたが、耳に噛み付いた。最初は軽くに見えたが、次にはもう少し激しく、たて続けに数回噛んだ。(犬はこうした噛み方をするらしい。) 小松菜は最初、何が起きたのかよく分からなかったらしい。だが次の瞬間、立て続けに噛んだ時には、物凄い声を上げた。「ギャーッ」っと。 我が犬は、小松菜が斜め後ろに立っていたり、走り回り家の中に入ろうとしたり等で、侵入者かと思い、そうしてしまったのだ。今までにこうした事はなかったから。 だがこの時はもう真っ暗になっていた。数人いた警官達も、誰もこんな事が起きているのは分からなかった。彼等はまだせわしなく、動き回っていたから。 続く…
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