第2話 2月革命

(4) 2月革命と第2共和政(1848~52)

 2月革命はついにフランスから王政の時代を消した。革命の主体は小ブルジョアや労働者たちであった。当初はラマルティーヌなどのブルジョワ共和派とともに、ルイ=ブランら社会主義者も含む臨時政府のもとで改革が進められ、国立作業場の設置など、積極的な改革を進めたが、経済の不安定が続き、4月普通選挙の結果、社会主義勢力が後退することとなった。ブルジョワ勢力が主導権を握った臨時政府が国立作業場の廃止に踏み切ると、反発した労働者の蜂起を政府軍が鎮圧するという六月蜂起の事件がおこり、軍人のカヴェニャックが実権を握った。一方で王党派の勢力が増大するなど、動揺が続いた。


11月に制定された第二共和政憲法は人民主権、三権分立、大統領制を採用し、男子普通選挙を定めたが、年末の大統領選挙で当選したのは、革命を冷静に指導したラマルティーヌでも、反乱を抑え憲法を準備させたカヴェニャックでもなかった。ナポレオンの甥のルイ=ナポレオンであった。

王政の復活、そしてまた共和政の混乱、さらに社会主義者の進出に危機感を持った、農民層と大ブルジョア層が結託して大ナポレオンの名前をもつこの男に託したのである。議会と対立したルイ・ボナバルトはクーデターを起こし、憲法を修正して、さらに国民投票を実施して、52年1月にはナポレオン3世として即位し第二帝政を始める。


【1848年革命】

フランスの2月革命はヨーロッパ君主諸国に激震を与えた。保守反動の君主制国家に対する、自由主義・ナショナリズムの反乱が連鎖反応的に起こり、一挙にウィーン体制を崩壊させた。

フランスの2月革命に続き、ウィーンとベルリンにおける3月革命が起きる。ウイ-ン体制を主導してきたメッテルニヒの失脚、オーストリア帝国の動揺に乗じ、その支配を受けていた諸民族の独立運動が起きた。イタリアのマッツィーニによるローマ共和国の建国、ミラノとヴェネティアなどイタリアでの革命、またハンガリーの独立運動など。この年に起きた一連の革命を「1848年の革命」と総称する。この年の2月にマルクスとエンゲルスの『共産党宣言』が刊行されている。


【イギリスの諸改革】

一方、同じ時期のイギリスでは議会政治の発展の中で労働者の選挙権要求であるチャーティスト運動の最後の高揚を見せ、一方では1846年に穀物法廃止、49年の航海法廃止などによって自由貿易主義が勝利を占めている。


【共産党宣言】

 ヨーロッパにおける1848年革命は、ウィーン反動期から資本主義の新たな展開期としての転換点となった。それは同時に、ヨーロッパ社会の新たな対立軸は、従来の絶対君主対市民ではなく、資本家階級と労働者階級という階級対立に移ったことを示している。同年に発表されたマルクスとエンゲルスの『共産党宣言』は正にその転換点を示す記念碑的述作といえる。


【アメリカの登場】

1848年はアメリカ合衆国においても重要な年であった。まずアメリカ=メキシコ戦争の結果、カリフォルニアとニューメキシコを獲得した。獲得したカリフォルニアで金鉱が発見され、それを契機として大規模な西部への人口移動であるゴールド=ラッシュが起こった。これは大西洋岸から太平洋岸に及ぶ北米大陸に巨大国家アメリカ合衆国が誕生することを意味している。

ステイツ(州)か連邦か、奴隷制度を存続させるのか否か、北部産業資本家対南部大地主、独立戦争には勝ったが、克服できなかった矛盾を解決すべく、南北戦争が始まった年でもあった。


【植民地の拡大】

同時に世界全体ではヨーロッパ資本主義諸国によるアジア、ラテンアメリカ諸地域への植民地支配の本格化と、それへの抵抗の始まりというテーマに移行していく。アジアではイランでバーブ教徒の反乱が起こっている。その前後に1840年のアヘン戦争、50年代の太平天国の乱、アロー戦争、1857年のインド大反乱等の歴史的事件に留意しておきたい。


【19世紀後半の世界】

フランスにおいても第二共和政はルイ=ナポレオンによって形骸化され、1852年にはナポレオン3世の第二帝政に移行する。またドイツにおいては、プロイセンによる統一が急速に進みビスマルク時代を迎え、一方のオーストリア帝国は多民族国家としての苦悩を深めていく。ウィーン体制から次第に距離を置くようになっていたイギリスは、一人、産業革命後の工業化にひた走り、海外植民地を拡大して繁栄を道を歩んでいく。そしてアメリカ合衆国は間もなく南北戦争の危機を克服し、大国への歩みを開始する。東ヨーロッパではロシアが大国化し、バルカン半島やアジアでの南下政策を強め、新たな脅威となり始めた。19世紀後半の欧米は、このような大国(列強)が競い合う時代となっていく

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