戦争と革命の時代『パリ・コミューン』
北風 嵐
第1話 王政復古
(1) ウィーン会議
1814年9月から1815年6月まで、オーストリアの首都ウィーンでオーストリア外相メッテルニヒが議長となって、ナポレオン戦争後のヨーロッパの秩序を回復させるための国際会議が行われた。19世紀前半のウィーン体制を成立させることとなった重要な会議である。それは出席者をみてもわかる。
会議の主な参加者
ロシア皇帝アレクサンドル1世、プロイセン王フリードリヒ=ヴィルヘルム3世、イギリス代表カスルレー、ウェリントン、オーストリア代表メッテルニヒ、プロイセン代表ハルデンベルク、フランスのタレーランらが出席。
フランス革命とナポレオン戦争後のヨーロッパを、それ以前の状態に戻すこと(フランスのタレーランが唱えた正統主義)を理念として会議が始まったが、実際には各国とも領土の拡張と有利な条件の獲得を狙って腹を探り合い、なかなか進捗せず、代表たちは舞踏会などでいたずらに時間を浪費したため『会議は踊る、されど進まず』と揶揄された。
しかし、ナポレオンのエルバ島脱出の報を受けて、列国は合意の形成を急ぐこととなり、1815年にウィーン議定書の調印にこぎつけた。この会議によって、19世紀前半の保守反動体制であるウィーン体制が作られた。
その頃日本は天保の改革の時代。各地に飢饉が広がり、打ちこわしが起こった。伊能忠敬・『沿海実測全図』。杉田玄白ら『蘭学事始』時代は幕末に向かっていった。
(2) 復古王政
1814~1830年まで。ナポレオン退位後、復活したブルボン朝のルイ18世・シャルル10世の支配時代を「復古王政」という。革命前のアンシャン=レジームの復活を策したが、市民意識は定着していたので、所有権の不可侵や法の下の平等などの革命の成果は保障された。
またルイ18世のもとでは、タレーランが正統主義を掲げてウィーン会議に参加し国際的立場を維持したが、ウィーン議定書では国土はフランス革命前に戻され、イギリス・ロシア・オーストリア・プロイセンの四国同盟によって監視されることとなった。それでも賠償金も払い終わった1818年には、五国同盟に加えられてヨーロッパの強国として復活した。
1824年に即位した弟のシャルル10世は、より反動的な政治を行い、ブルジョワジーの反発が強まり、1830年の7月革命で倒される。
(3) 7月革命と7月王政(1830~1848)
1830年の7月革命によって成立した国王ルイ=フィリップのもとでの立憲君主政体をいう。オルレアン公ルイを担いだのが、首相となったティエールであった。1848年の2月革命まで続く。
議会は制限選挙制によって有産者が多数を占め、上層ブルジョアジーが支配権力を握った。この7月王政の18年間はフランスの産業革命時代となり、機械化が進み鉄道の建設が始まった。また1830年に始まるアルジェリア出兵による植民地化をさらに進め、またエジプト=トルコ戦争でのムハンマド=アリーへの支援など、東方問題への介入を強めた。
一方、産業革命の進行に伴い、都市の中産階級と労働者階級も形成され、彼らは普通選挙などの改革を要求して選挙法改正運動を展開した。上層ブルジョアジー政権である国王ルイ=フィリップとギゾー内閣への批判を強め、政府の集会禁止に対して各地で、ギゾーに対抗するティエールらが、改革宴会と云うスタイルで反対運動に気勢を上げる。これが2月革命の民衆蜂起に火をつけることになる。
7月革命は、ウィーン体制下の反動的権力に抑えられていたヨーロッパ各地の自由主義運動、ナショナリズム運動に大きな影響を与えた。まず、隣接するオランダからのベルギー独立運動がおこり、12月に独立を達成した。ロシアの支配を受けていたポーランドの独立運動もおこったが、こちらはロシア軍の介入で弾圧された。イギリスでは、7月革命の民衆の勝利の影響を受けてイギリスの労働者による選挙権の拡大を要求するチャーティスト運動が盛んになった。
*ドラクロワの『民衆を率いる自由の女神』の絵はこの7月革命を描いた絵である。
*フランス革命初期に国民衛兵の総司令官として活躍したラ・ファィエットが立憲君主主義者としてルイ・フィリップを支えるべく内閣首班として復活したが、翌年には解任されて下野し、3年後パリにて死す。77歳。革命の動乱を生きた数少ない長寿者であった。
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