第17話 向日葵のプロポーズ

日向李真デビュー


デビュー曲「桃とレモンのように」


ポスターにはそう書いてある。


「李真、デビューおめでとう。やったな!」

「遥人のおかげ。ずっと二人の夢だったもんね。中学の頃、遥人から歌がいいって褒められて、バンド結成して。そしてこの歌を作って。あれから10年経って、やっと夢が叶った。」

「俺がプロデューサー、そしてお前がアーティストとしてデビューする。それが夢だったもんな。」





パーン!パパン!!

パパパパパン!!


中3の夏。

桜木遥人が私のことを好きだって言ってくれた、

あの花火の夜。


「…ホント?」

「嘘なんかつくかよ。」

「だって、嬉しすぎて…」

たぶん顔が真っ赤なんだろうな、と

鏡なんか見なくてもわかる。

顔も浴衣も、すごく熱い。

私は両頬に手を当てた。

「最初はお前の歌が好きだった。

でも、お前のことを知るうちにだんだん気になって…。」

「やめてよ…!恥ずかしい!」

「俺だって恥ずかしいよ!」

「…日向?いつか俺がプロデューサーになって、で、お前が俺の歌を歌ってくれ。」

「えっ?!何、急に?!」

「よし!決めた!そうしよう!」

「ちょっと何言ってんの?!」

そう言って、急に桜木遥人は私にキスをした!!

もう私の心臓が持たない!!!!!





…余計なことを思い出したが、それから10年。

今日が私のデビューCDの発売日だ。

「李真。」

「何?」

「これからも、俺の歌を歌ってくれ。」

「…うん。歌うよ?」

「バカ!意味わかってないだろ?」

「それ以外にどんな意味があるの?」

「俺の歌をずっと、歌ってくれってことだよ!」

「だから歌うって言ってんじゃん!」

私の目の前に、いっぱいの向日葵と、

指輪が差し出された。

「…あ~!結婚して、ずっと俺の側で、一緒に音楽やろうってことだよ!」

「えっ!やだ…!」

「嫌なのかよ?!」

「…あ、そうじゃなくて!やだ、そういう意味なんて気づかなかったってこと…。」

「で、どうなんだよ?!」


もちろん、答えは決まってる!

「好き!」

と言って、思いっきり遥人に抱きついた!

向日葵の花束は、大胆に落ちていった。



女子高生2人がCDショップで話している。

「日向李真、いい曲歌うよねー!」

「私も好き~!可愛いし、しかも旦那さんがプロデュースしてるんだよね?いい夫婦って感じ!」

「この前、歌番組出てるの見たけど、キャラも面白かったよ!旦那さんと、子どもの話もしてた!」

「娘、5歳の女の子って言ってたっけ?」

「そうらしいよ!」

「夫婦2人とも音楽関係の仕事してるからか、娘、すでに音楽に興味あるみたい!家にあるピアノ弾いたりしてるらしいよ!」

「新しいアルバムもいいよね!CDなんか買わないで、ダウンロードでもいいんだけど。日向李真のCDはつい買っちゃうな。本人も歌詞も可愛いから、ジャケットや歌詞カード見ちゃう!」

「でも、私はやっぱりあの曲が好きだな。」

「あっ!あれでしょ?日向李真が中学生の時に旦那さんを思って書いたって歌詞の…。」









「桃とレモンのように!」











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桃とレモンのように 桜琴(さこと) @whitedevil0122

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