第14話 風鈴の音が奏でる気持ち

満を持して、バンド「四季花(しきばな)」の第二回練習が始まった。

実はこのスタジオ、第一回の練習から使用している。

入口にある、恐らく夏限定の可愛い風鈴の音が特徴だ。



もう、前回のようなやる気もあるかないかわからないような、中途半端な私ではない。

桜木遥人は言い放った。




「じゃ、まず合わせてみようか。」



… … … …



「日向!すげーよ!」

「えっ?!」

「声も前回より出てたし、やっぱり俺が期待してた通りだな!」

「ホントに?!」

桜木遥人が一番に感想をくれた!

やった、やった~!!!

と思うけど、ここははしゃぎすぎず。



他の人はどう思ってるか気になって、周りを見回した。



楓や海藤くんは、絶賛!

「いいじゃん!声も出てるし、綺麗な声!」

やった、やった!!



最後の1人、彼女は…。






…私の方を冷静に見てるだけで、ノーコメント。

やっぱり、そんな簡単に認めてくれないのかな…。




… … … …




練習が終わった。

私たちはいつも楽器店のスタジオで練習しており、

会計する際には、ギターやらたくさん楽器があるとこを通って、レジに行く。

練習終わりには、レジに行く前に、その近くの楽器のとこに居て、皆で話をする。



「いやー!今日はよかったな!」

「そうだよな!全体がまとまりかけてるよな!」

「あと練習は1回できたらいい方だから、皆自主練よろしくな!」

「了解!!!」

リーダー桜木遥人の指示に、皆が合意する。



「じゃ、お会計するか。」

「おう、遥人!今日はどんな感じだった?」

「おっちゃん!いい感じだったよ!」



「あれ?桜木くんと店員さんって知り合いなの?」

「え?知らなーい。」

「ああ。ここは橘さんのお父さんのお店だよ。」

「えっ?!そうなの?!」

「楓と日向さんは、前回の練習の会計の時、飲み物買いに行って、後払いしたから、おじさんが橘さんと遥人に話しかけてるの見てなかったもんね。」

「うん。知らなかった!」

「娘の橘さんがいるし、遥人がこの店の常連ってことで、実は微妙に金額もおまけしてくれてるんだよ!」

「えっ!そうだったんだ!知りもせず…。」

「ちなみに、遥人が橘さんと親しくなったのは、塾が一緒で、この店のこと聞いて、ピアノの自主練習してた時に、橘さんがベース上手だ、って知ってからなんだよ!」

「えっ!あー…。そうなんだ。そうなんだ!

とりあえず、まずは橘さんのお父さんにお礼伝えるね!」



そうだったんだ!

桜木遥人と橘さんが親しくなったのは、この店がきっかけなんだ!

よかった!あー、よかった!!!!



皆で外に出た時、スタジオの入口の風鈴の音が、私の気持ちを代弁するかのように、より陽気に音を奏でてるように聞こえた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る