第15話 夏祭りの初ライブ
8月上旬。
ついにこの日が来た。
夏祭り。
そして、私たちのバンド「四季花(しきばな)」の
初ライブだ。
結局、全員で練習できたのは、3回だった。
だけどここまで来たら、やるしかない。
この祭りが、県内で一番大きいお祭りだとしても。
私がバンドメンバー唯一の音楽経験なしだとしても。
バンドに出るの自体、初めてだとしても。
今までやってきたことを信じて!
「それではお聴きください。
『桃とレモンのように』。」
実は、バンドを組もうとなって、
曲決めをするにあたって、
メンバーの意見が割れた。
皆、好きな音楽のジャンルがバラバラだった。
そこで、リーダーの桜木遥人(さくらぎはると)は
言った。
「オリジナル作ろう!」
というわけで、実は歌い出した曲は、
私たちのバンド、四季花(しきばな)のオリジナル曲。
しかも作詞は…
なんと私、日向李真(ひなたりま)。
そして作曲は桜木遥人(さくらぎはると)。
作詞なんてしたことないし、最初は断ったが、
桜木遥人に説得されてしまった。
というわけで…。
「ワン、ツー、スリー、フォー!」
ドラムスティックが鳴る。
私は歌い始めた。
「大きい目。
華奢な肩。
ブレザーの制服は、幼さの残る彼には、
大人っぽすぎ。
ちょっと似合わない。」
ピアノの音が、曲の全体的に、爽やかに鳴り響く。
夏にぴったりの恋愛ソングに仕上がったと思う。
「だけど強引な君。
皆で行こうって言ってたのに。
突然、二人きりのデートにして。
下の名前で呼ばせようとして。
でも、私の好きなこの町の食べ物。
都会から来た君は、バカにしないでくれた。
可愛かった。
意外と素直なんだな。」
「そしたら急にお前は歌が上手いだなんて。
急に褒めないで。
夏の夜空に
飛行機雲があるみたいな
そんな衝撃。」
ギターとベースが高揚感を増し、ドラムは太鼓をサビに向かって、強く叩かれた。
「ダダダダダ!!!!」
「桃とレモンのように
君は甘いの酸っぱいの?
桃とレモンのように
どっちが本当のあなたなの?
桃とレモンのように
気づけば恋に落ちていた
甘酸っぱい、そんな夏の日」
今年の夏。
桜木遥人(さくらぎはると)と親しくなった。
バンドまで組むことになった。
1曲歌い終わって、私は最高の気分だ!
後ろを振り返り、桜木遥人(さくらぎはると)を
じっと見つめた。
「桜木遥人!」
「好き!!!!!!!!」
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