第2話 朝ご飯を食べ終わった時。
今日の朝は炊いたご飯と焼いた子持ちししゃもと味噌汁でお腹を満たした。グリルは無いからフライパンにクッキングシートを敷いてししゃもを焼いた。味噌汁は冷蔵庫に保存しておいた煮干しと鰹節の出汁を温めた液体に味噌と麩と乾燥わかめを入れただけ。出し殻鰹節はおかかとなって白米に味を足した。
一見質素に見えるが,静かな朝には静かな朝餉がちょうどいい。キャンプ場でするバーベキュー,海の家の焼きそば,商店街を歩きながらのコロッケ。雰囲気,状況にあった食事は満足度が一際大きい。朝だからいい,朝だから許される。そして昼には食堂で冷たい麺。くずれない,いつもと同じ流れ。これは『ルーティーン』と言えるのだろうか。
「・・・」
また。またやってしまった。昨日のことを思い出してしまったからか,はたまたいつもの流れを噛みしめてしまったからか。わからないことがわからないことを呼んでしまった。呼ばれて思わず悩んでしまった。一つの疑問を飛ばしてまで考えてしまった。
昨日やってしまったんだ。1回やったら2回も3回も変わらないだろう。だから諦めて頭を使おうと思う。
「“好き”って何だろう。」
????????
秒で後悔した。なんでこんな難しい題材を選んでしまったんだろう。思わず天を仰いだ。灰色の雲が連なっていた。後悔が増えた。
その時,霹靂が如く,頭上の電球が光った。『“好き”の反対は“嫌い”じゃなくて“無関心”』という言葉を思い出した。これから考えていけば糸が見えるのでは。あとは穴に通すだけ。
現状『-(好き)=無関心≠嫌い』と仮定している。まずはこれを砕いていこう。
あるものに対して嫌いだと思っているならば,あるものに意見を持っている。確かに『無関心≠嫌い』である。同様に『好き≠無関心』である。
次は『-(好き)=無関心』を解く。これは『好き=-(無関心)』と変形できる。無関心の反対,つまり関心があるものには基本的に好意的である。四捨五入すれば『好き=-(無関心)』よって『-(好き)=無関心』が成り立つ。
これで『-(好き)=無関心≠嫌い』は成り立つと言える。証明終了。
はい説明不足。これで完全解答になるとおもったら大間違い。流石の私でも解る。一つずつ見ていこう。
一つ,『-(好き)≠嫌い』の証明がない。二つ,『
時間はまだある。ゆっくり見ていこう。
一つ目から潰していこう。言葉じゃわかりにくいから記号化してみよう。
『-A=B,B≠C⇒-A=B≠C⇒-A≠C』
あら,合っているように見える。じゃあ例を作ってみよう。
『-(-3)=1+2,1+2≠-3⇒-(-3)=1+2≠-3⇒-(-3)≠-3』
やっぱり合っている。
『-(-3)=(±√3)²,(±√3)²≠-3⇒-(-3)=(±√3)²≠-3⇒-(-3)≠-3』
合っている。
『-(-1)=1,1≠0⇒-(-1)=1≠0⇒-(-1)≠0』
結果『A=C』とも言えることがあることを知った。
つまり『“好き”=“嫌い”』が成り立つときもあることになる。
気を取り直して二つ目。今更ながら,言葉は式に組み込むことはできないのは知っている。でも,今は数学算数の時間じゃない。便利だから利用しているだけ。
改めて,『
つまり『嫌い≠無関心=-(好き)』または『無関心≠嫌い=-(好き)』。合ってる気がする。
言葉に直すと『“嫌い”の反対が“好き”では無く,“無関心”の反対が“好き”である』になる。
怪しくなってきたけど三つ目。プラス感情でもマイナス感情でもない対象に与える言葉は何だろうか。それこそ“無関心”ではないだろうか。
“普通”って言葉が引っかかった。普通って一蹴りしてしまうって関心あるのか疑問に思ってしまう。ややプラスでもなくややマイナスでもないから“普通”。聞けば聞くほど“無関心”と大差ないと思ってしまう。
ここまでくると『“好き”の反対は“嫌い”じゃなくて“無関心”』に怪しさが産まれてくる。
確かに“好き”と“嫌い”が一緒になるときがある,確かに好きでも嫌いでもないことは“無関心”と言う,確かに“無関心”じゃないことは“好き”とも言える。
だんだんずれている気がする,大丈夫かな。だって“好き”と“嫌い”が紙一重だという結論が出てきそうな導かれ方をしている。
!!!!!!!!
いっそのこと,“好き”と“嫌い”は月と
やっぱり後悔したままで終わればよかったと後悔を重ねてしまう。難しすぎる。わからなくなる。湯気が出てしまう。お茶を飲もう。クールダウン。クールダウン。
整理しよう。“好き”と“嫌い”はほとんど変わらないが“無関心”ではないことは確か。差は好印象か悪印象かだけ。結局はそれに対して思いがあるということ。
無理やりだが時間切れギリギリなので,解答欄に記入しよう。
問:“好き”って何。
答:それに対して良い思いがあること。
********
「明後日までの課題終わった?」
「え,何?終わらせてないの?」
「お?図星かな?」
「これがその課題です。」
「見せてくださいお願いしますっ!」
「いいだろう。」
「ホント!?」
「だが,無償では見せられないなぁ。」
「どういう,こと?」
「簡単さ。お前は私に誠意を見せる,それだけのことだ。」
「誠…意?」
「交渉は苦手かい?世の中ギブアンドテイクだろう?さあ,お前は私に何をしてくれるんだ?なんだったら,私が選んでやろうか?」
「いや,僕が選ぶ。何をされるか分かったもんじゃないからね。」
「そうか,私は寛大だ。相応の対価以上で無ければ許されないからな。では言ってみろ。」
「次の土日…うち…来る?」
「ごめんバイト。」
「はぁ!えっ,ちょ…ぅぅぅ。」
「顔を伏せてどうした。それしか無かったのか?残念だな。」
「かけうどんにかき揚げと温泉卵のトッピングに冷奴を奢るでどうだ!」
「決まりだぁ!」
「うどんに負けたぁ!!」
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