第12話
▼▼▼
王都と言っても規模は小さい。
魔物が跋扈する世界では街の周りに巨大な壁を作るのが常識だ。それ故に街の規模はできるだけ小さくする。小さくした上でそのような街を複数作り、有力な貴族に統治させるのだ。しかし遠くの領地は王都との連絡が滞るため、貴族が自分の領地で勝手なことをする。今の現状はわからないが当時は非合法な奴隷制度を大々的に執り行っていた貴族もいた。因みにその帰属はカイドによって処刑され、新たな貴族に統治されているはずだ。
「速いもんやなぁ、てっきり移動は馬かとおもとったけど」
「もうそろそろ到着だぞー。
早く頭閉まっとけ、ワイバーンに食われるぞ」
「マジにゃ!?」
「此処がパプア村かにゃ?」
「みたいだな。聞いたこともない村だ」
「あら、そうなん?」
「お前、自分の出身地の地名全部言えるか?」
「無理やなぁ」
「だろ?」
そんな戯言を
「すんませーん、ギルドの者でーす」
「手荒やなぁ」
ドアをドンドン叩いて村長を読んでいたらそんなことを言われた。
ハンターなんてこんなもんだろ。ノックしないでいきなり入っていく奴もいるしな。
「おぉ、ハンター殿か。待っておったよ」
「イノシシ狩りだろ?詳しく聞かせてくれ」
出て来たのは髭モジャのお爺さんだった。
家の中に入り使い古された椅子に座る。
「俺の名前はスイ、こいつは使い魔のケット・シー、見た目は貧弱だが魔法使いだ。安心してくれ」
「魔法使いそうだったんですか。安心いたしました。
では早速件のイノシシについてお話しましょう」
そういって村長はお茶を飲んでのどを潤す。俺もそれを受けてお茶を飲む。
渋いな。ケットも舌を出してペッと吐いている。
「イノシシが現れたのは二週間は前のことです。
夜、我々が寝静まった頃に奴は現れました。大きな体躯と獰猛な息遣い、そして巨大な牙。夢かとも思いましたが、それははっきりと存在し作物を食べていました。
作物が食べられれば飢え死にしてしまいます。槍や火矢などでなんとか抵抗したのですが、五人が骨折の怪我をし、二人は死亡、二軒の家が粉々に壊され、なんとか退くことに成功しました」
明らかにただのイノシシの仕業ではないだろう。となればケットのような魔獣だろう。
「破壊された家は残っていますか?」
「えぇ、案内しましょう」
そういって案内された場所は村の中でも森に近い場所だった。そこには土を掘り返されて荒らされた畑と半壊状態の家がある。
「うわぁ、えげつないなぁ」
空から爆弾でも落ちてきたのではないかと見違えるほど、家は崩れ落ちていた。家屋の壊れ方を見るに、下半分をイノシシが通り破壊、重さに耐えきれなくなり倒れたのだろう。
というかお前が喋り始めて村長が驚いてるぞ。まぁ、ケット・シーは喋る魔獣だから不思議はないんだが。
「魔獣の仕業であることは確実ですね。過去に魔獣が現れたことは?」
「え、あぁ。過去に一度ほど、五十年も前になりますが」
「まぁ、王都も近いし滅多に魔獣なんて来ないよなぁ」
「えぇ、それでですねぇ。ハンター殿。
今回の魔獣を討伐したら、その魔獣を譲ってほしいのです」
「なるほど、だから銀貨二枚なわけか」
村人も今回の被害で食料に困っているのだろう。
「じゃあ、毛皮と牙は貰っていいな」
「ん、まぁそうですな」
流石に全部村にあげるのはあり得ない。こちらの取り分が少なすぎる。
「と言っても今回の魔獣討伐。
殺すのは厳しいだろうな。追い返すことになるかもしれない。そうなれば銀貨は一枚でいい」
「構いませんが追い返した証明はどうするのですか?」
「牙を見せる。食料に飢えた魔獣でも牙を取られるほどのダメージを与えれば追い返せるはずだ。それに村人はイノシシの牙を見たんだから証明もできるだろう」
「なるほど、わかりました。
討伐するまでの家は此方で用意しましょう。しかし食料の方はありません。一応食料持参と依頼書に書いておきましたが拝見されましたか?」
「あぁ、食料の方は用意しているから問題ない」
「家は森の近く、今は誰も住んでおりませんのでご自由にお使いください」
「わかった」
俺は案内された小屋に入って荷物を置く。
「さ、寝るか」
「相変わらずやなぁ」
移動で疲れたしな。
久しぶりに鳥車乗ったわ。尻痛い。
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