電気の武者
レブナントは
首は屋敷の窓から高く飛び上がり、鋭く長い爪を生やした魔王の指がそれをしっかと掴んだ。首と胴体の接合部から光がほとばしる。そして、レブナントが閉じていた目を開けば、そこにいるのはもはや「首なし」ではない魔王そのものに見えた。
「やりやがった…」
ガストンは顔をしかめるなか、ララノアは淡々と矢を番え、放ち続けていた。首が膨らんだ時から始めていたのだが、首は結界を張って矢を弾いていた。しかし、魔王の身体と合体するまで空には渦巻く風はなかったから、数本の矢を魔王の胸板に突き立てることができた。しかし、それはすぐに胸筋と再生していく肉の圧力により体外に排出されてしまう。数えられるほどの矢で倒せる敵ではないのだ。
「まだ準備はできませんの?」
オリヴィアが眉根を寄せて言う。
メイドたちが伝声管で命令を伝達したり結果を聞いたりしていたのだが、オリヴィアの思いのほどには作業は捗っていないようだった。
「できました」
メイドのひとりが叫んだ瞬間、消えていた町の明かりが一斉に灯った。
「魔法から電気への切り替え完了です」
続いて倒れていたゴーレムの身体に送電線が接続される。青い火花が飛び散った。
「故障したバッテリーを強制排除。『
レブナントによって腐食させられ
背中に電源ケーブルをつけて現れたのは、銀色の手足を持つ美少年のように見えた。
「お姉さま、ごめんなさい。僕、倒されちゃってました」
少年がお姉さまと呼んだオリヴィアは、それに対してうんと頷き、扇子を持った右手を魔王に向けた。
「今度はあらためて、ご挨拶してあげなさい。あなたの電気銃で」
にっこりと微笑んでオリヴィアは言った。今度は扇を拡げて顔を隠した。
「はい、お姉さま」
言うが早いか、少年は両手を魔王に向ける。左右の腕の間に稲妻が走り、光の球が形成される。球に向かって電光が走り、球は圧縮され小さくなっていった。そして極限まで圧縮された白い光は次の瞬間、轟音を立て魔王めがけて飛んでいく。
見たこともない飛び道具にレブナント魔王は驚いていた。魔力による結界をまとった手で弾こうとする。しかし、白光は結界をたやすく突き破った。腕の大半が白光に裂かれ、魔王は絶叫する。
「いいご挨拶ですわ、イース」
オリヴィアは少年に言った。このきつい性格の女には珍しく満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます。お姉さま」
機械の身体を持つ少年、イースは答える。
「では、もう一度、
オリヴィアが言うのに合わせてメイドたちが台車に載せて運んできたのは、大人の身長の倍ほどもある巨大な刃だった。
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