第1話

全力で自転車を漕いだお陰で何とかギリギリ間に合った。そんな時、クラスメイトの晋助(しんすけ)が話しかけてきた。


「どうした??いつもなら30分前には着いてるのに。珍しいな??」

「あー、ちょっとね。」

「おいおいなんだよー。あ、もしかして、好きな子のこと考えてたんだろ??」

「なっ、そんなわけないだろ!」

「だよなー。お前、恋愛に興味無さそうだもん。」


晋助は幼稚園からの幼馴染で、僕のことは大体理解している。ただ、僕とは違って誰もが認める陽キャである。時にそれが羨ましく感じたりする。


「そういや、今日のビックニュース聞いたか??」

「いや、聞いてないよ。何かあったの??」

「今日、このクラスに転校生が来るんだって!それも女子!!」

「ふーん。そうなんだ。僕とは無縁だね。」

「そんな事言うなよー。もしかしたらお前のタイプかもしれないぞ??」

「そんな人いる訳ないだろ。大体僕は女子が苦手なんだ。この前だって…」


僕は先日、隣のクラスの朝日(あさひ)に無理矢理買い物に付き合わされた。全く外に出ないって分かってるはずなのに、長い時間歩かされて足が棒になった。


「あー、朝日に買い物に付き合わされたんだろ??災難だったなー。」


と、晋助はケラケラ笑っている。


「笑い事じゃないよ。筋肉痛にになって一日中動けなくなったんだぞ??」

「たまには外の空気でも吸えってことだろ。朝日なりの優しただって。」


そんな話をしているうちに、HRの始まりを告げるチャイムが鳴った。先生が教室に入ってきていきなりこんなことを言った。


「えー、今日からこのクラスに新しい人が来ます。それじゃ入って。」


先生に促され、入ってきたのは本当に女子だった。


「皆さん初めまして。今日からこのクラスの一員になります、佐久間香織(さくまかおり)と言います。よろしくお願いします。」


自己紹介を聞いた時、何故か懐かしく思えた。


「この声、どこかで聞いたことが…」

「ん?何か言ったか??」

「あ、いや、なんでもないよ。」


それにしても、この子結構可愛いな…そう思っていた矢先、


「それじゃ、佐久間さんの席はあそこね。」


なんと僕の隣に佐久間さんが来た。やばい、なんて声かければ…そう思っていたが、彼女がすぐに話しかけてきた。


「初めまして。佐久間香織です。名前なんて言うの??」

「ほ、堀田誠(ほりたまこと)です…」

「それじゃ誠くんって呼ぶね。これからよろしく!」

「あ、うん。よろしく…」


改めて自分はこんなにも人見知りなのかと痛感した。この時ほど、晋助のコミュ力が欲しいと思ったことは無い。

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