花金
ヒガシカド
花金
仕事を終え、俺は帰路についた。
夜七時、街灯が明るく照らし出す道を、俺は歩いた。今日は花の金曜日、何か自分にご褒美でも買って帰ろうか。カツ、ギョーザ、唐揚げ…夕飯が一品増えるとそれだけで幸せな気持ちになれる。素晴らしき哉人生。いや、午後半休を貰えてない時点でそこまでではないのかも。でも、土日はきちんと休めるのだし、勤め先も結構気に入ってるんだよ。オールオッケー。
スキップしそうになった俺をその場にとどめたのは、奇異な男の姿だった。
服は全身黒ずくめ。スーツじゃないな、タキシードか?赤黒い仮面とシルクハットを被っていて、顔は分からない。帽子のせいで背が高く見えるが、本当は俺と同じくらいだろう。
彼を見た瞬間、俺はびびっときた。俺は彼を知っている!
どうしようか。知り合いなら声をかけてしかるべきだろう。でもこんな格好の人と友達…それはそれで面白そうだけど、こんなキャラの人知り合いにいたっけ?
彼をもっとよく見てみよう。性別は男。身長は俺と同じくらいで、歳はそこまで取っていない。二、三十代だろう。かつ僕の知り合いとするなら、結構絞れそう。
まず、会社関係。候補は二人だ。上村と永田先輩。でも上村とは駅で別れたばかりだし、先輩は今週出張だ。次、大学時代の友人。ふざけてこんな事するなら、一番ありそうな人たち。一人一人思い出してみたけど、なんか違う。次、中高時代の同級生。部活で一緒だったやつぐらいしか思い出せない。俺バスケ部だったから同輩はみんな背が高い!ムカつく!結局俺一七五止まりだったし!次!親戚!従兄弟くらいしかそぐわないし、ぶっちゃけ顔覚えてません!法事ぐらいでしか会わないから。以上!
結局分からなかった。仕方ない、声をかけるのは無茶だったという事で。俺は彼とすれ違い、そのまま先を急ごうとした。
その時、俺の頭の中にぱっと明かりがついた。まだいたよ、条件に当てはまる人。
「まさか、俺?」
タキシードは闇に溶け、彼の姿は既に見えなくなっていた。
花金 ヒガシカド @nskadomsk
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます