SCP-012-N 『情報』
緋鳥と外出の約束を交わした日の夜、久し振りに夜遅くまで春夏冬先輩と俺の部屋でゲームを楽しんでいた時に、緋鳥から電話が掛かってきたのでゲームを中断して部屋から退室して電話に出た。春夏冬先輩が「なになに~? 彼女~?」などとうるさく聞いてきたが、何とか出ることが出来た。
「はいもしもし、こちら餅屋持葉」
「もしもし、餅屋さん。緋鳥ですけど、夜分遅くにすいませんね。今大丈夫ですの?」
「ああ、たった今大丈夫にして来た。それで、何の用だ?」
「たった今……? まあいいですわ、明日の外出先を決めたいんですの。何か案は有りますか?」
「外出先か。インドアの俺はこういう時に行くところがないんだが……」
基本的にデスクワークと実験ばっかりだった俺にとって、外に出てどこかに行くというのはあまりした事のない行為の一つだ。なので、パッと思いつく外出先も特にない。
「いや、別に・・・お前の方で決めてくれても構わないが。」
「ええ、そんなこと言われましても・・・そうですわね~。私も外出する時は護衛がついてますし……そうだ、私ゲームセンターに行った事が無いんですのよ。だから行ってみたいですわ」
「え、無いのか? じゃあそれだな。人生の内一回は行かないと損するぞ。ていうかいつもは護衛ついてんのか。っていう事は、学校にも?」
「いますわ。多分何処からか監視してるはずですが」
何か普通に怖い話を聞いてしまった。農作業をしている所や弁当食ってる所も見られてた訳か。
それにしても、ゲームセンターに行ったことが無いとは……。いくらお嬢様で厳しく育ってそうでもゲーム会社の娘だ。やっぱりそこらへんは違う何かがあるらしい。
「餅屋さんは行きつけの所とか有りますの?」
「ああ、俺の行きつけの所があるからそこにするか。じゃあどこで集合する?」
この後、集合場所と時間だけ指定して、少し世間話をした後に電話を切った。……さて。先ほどから盗聴者がそこに居るので、まだ電話をしている振りをしていきなりドアを開けると、春夏冬先輩がドアに頭をぶつけそうになるが、それを涼しい顔で回避する。
「駄目だよ餅屋く~ん、そんな風にいきなり上司の頭を狙っちゃ~」
「その上司が部下の私用電話を無断で聞いてるんですか」
「う……。と、所で~、さっき電話で話してた人って~・・・もしかしたら~、名字珍しい~?」
「? え、ええ・・・まあそうですね。」
「あ~、じゃあ人違いじゃないね~。多分~、孫佐道って子でしょ~?」
「え・・・・・・ま、まあ・・・はい。」
これには絶句した。俺と緋鳥の会話からその名前まで出るのも不思議だが、問題はそこじゃない。何故、今ここでその名前を出すのか、ということだ。・・・財団と関わりでも有るのか?
「ああ~・・・。えっと~、詳しくはセキュリティー的に話せないんだけど~、その孫佐道さんは~、このSCP財団日本支部に置いて~、割と凄い金額を寄付をしてくれてるのよ~」
「え・・・!? つ、つまり・・・。」
「……はあ、そういう事。あそこの社長はSCP財団と関わりを持ってるって訳よ。まったく、大変な子と関わりを持っちゃったもんだね」
春夏冬先輩の声音が下がり、いつもの間延びした声は無くなっていた。そんな声を聞いたことがなかった俺は、それほど真面目な事だと言うことに気付いた。俺は居住まいを正しくしながらも、頭の中では混乱していた。
「じ、じゃあ、僕の存在も知ってるって訳ですよね?その、自分の娘と財団職員が友達だって・・・」
「さあ、そこは分からないわ。その子があなたの事を名前付きで紹介してたら別だけど。しかもね? 私は心配性だから更にこう考えちゃうのよ。その子との外出で何か起こったら、どうなっちゃうのかってね」
確かに・・・…もしそこで何か起こって、その事を自分の父親に話してしまえば、限りなく無いとは思うのだが、ここの寄付金が無くなる可能性もあるのか。一見すると馬鹿げた問題だが、ここSCP財団に置いてそれはかなりの痛手だということが分かる。様々な薬品……記憶処理などはとある生物から出ている、という噂もあるがそれにしてもそれなりの金額が必要だと伺えるし、何よりも重要な、危険なSCPの収容にも金額が掛かる。
「つまり・・・僕が何かやらかしたら、そこで終わりと言うわけですよね?」
「そういうことね。さあ、明日は早いんでしょ? 流石にもう寝る準備をした方がいいと思うし、まあ、健闘を祈るわ」
そう言いながら春夏冬先輩は俺の部屋から出て行った。いつになく真剣だった春夏冬先輩に、俺は一抹の不安を覚えながら就寝の準備をしたのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
と、言うわけで。割と重要な事実を知ってしまった持葉くんは今後緋鳥に対しどのような態度をとるのか!? 乞うご期待!
……。次回予告的な物をしてもこれだけじゃ次回予告になってませんね。どうも餅屋五平です。
裏話をすると、実は今回で緋鳥ちゃんとの外出が終わるはずだったんですけど
SCウォオオアアアアアアアア-JP-Jの情報災害に掛かり。1000文字ぐらい吹っ飛んだ結果ここで区切る事にしました。[罵詈雑言]!
こっそりSCP
「リビジョンから差し戻してください。*1」
SCウォオオアアアアアアアア-JP-J
http://ja.scp-wiki.net/scpaaaaaaaaaaaaaaaaaa-jp-jより
by Ikr_4185
「我々は最後には、忘れ去られるのだ。」
SCP-3000「Anantashesha(アナンタシェーシャ) 」
皆大好き記憶処理剤の元。
http://www.scp-wiki.net/scp-3000又は
http://ja.scp-wiki.net/scp-3000
by djkaktus and A Random Day and Joreth
*1 もういやだ。
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