003 白栲の月影ひとへ…… 枕詞、単語、文法、句切れなし、散文取り

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  づきつくを思ひやりて、更衣ころもがへの心を


白栲しろたへの 月影ひとへ なつごろも うすく合はるる しらがさねかな


・しろたえの つきかげひとえ なつごろも うすくあわるる しらがさねかな

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[通釈]

 今となっては遠く離れた陰暦四月の月明かりの夜を思い起こして、衣替えの趣を詠んだ歌

 ((衣替えをし、しらがさねに袖を通して、その白襲が折しも月の光に照らされている。物に感じて思うことは、)) 月光の白が一枚薄く自然に合わさって、また同じように自然に、薄くも調和しているこのしらがさねであるなあ。


[補註]

・枕詞…初句「白栲しろたへの」→月。第三句「なつごろも」→うすく。

・単語…結句「しらがさね」→主に、あわせの和服で、表裏とも白の、布地の色の取り合わせ。

・文法…第四句「るる」→自発を表す。(主語が無生物の場合、受身になることは少ないようです。)

・句切れなし。


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白栲しろたへの 月影ひとへ なつごろも うすく合はるる しらがさねかな

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[推敲]

 初句の枕詞「白栲の」は、「白妙しろたへの」と迷いましたが、この歌は男女の仲を詠み込んだものでないので、「妙」でなく「栲」にしました。

 さて、陰暦の月初めにおいて月の姿は見えません。ですから、ことばがきの「づきつく」は四月十五日前後です。


[散文取り]

 清少納言『枕草子』〔五段〕四月、祭のころ……


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白栲しろたへの 月影ひとへ なつごろも うすく合はるる しらがさねかな

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[更新履歴]

・令和元年八月五日(二〇一九年)

 歌そのものを修正(修正前:白栲しろたへの月の影をもなつごろもひとへ合はせむしらがさねかな)。



(令和元年六月十七日)(二〇一九年)(夏歌なつのうた

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