002 今こそは一白襲…… 単語、文法、句切れなし、散文取り

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  づき、十日あまり五日頃の更衣ころもがへを思ひやりて


今こそは 一白ひとしらがさね うすら夜の 白影になほ 涼しかるらめ


・いまこそは ひとしらがさね うすらよの しらかげになお すずしかるらめ

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[通釈]

 今となっては遠く離れた陰暦四月十五日頃の衣替えを思い起こして、詠んだ歌

 夏になった今こそ、いわゆるしらがさねの色合いは、布地そのものが薄く、また、うっすらと白い夜の月の光に重なって、いっそう涼しく見えることであろう。


[補註]

・単語…第二句「ひと」→ある、ぼう、の意を表す。第二句「しらがさね」→主に、あわせの和服で、表裏とも白の、布地の色の取り合わせ。

・文法…結句「らめ」→この歌においては「経験外の現在推量」かつ「原因推量」の両方を表す。(終止形「らむ」)

・句切れなし。


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今こそは 一白ひとしらがさね うすら夜の 白影になほ 涼しかるらめ

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[推敲]

 第二句「一白襲」の「一」の訳出は、「とある」や「ぼう」では意味が通らないので、「いわゆる」としました。この「一」は、主に語調や雰囲気を整えるために置きました。

 また、結句「らめ」の推し量っている原因の内容は、通釈なら「月の光に重なって」であり、歌そのものなら「白影に」です。なんだかんだで、想像して仮定された現在の事実も、その事実の原因も、両方を推し量る歌になりました。こういう推量の歌になったのも、現代というか近代以降の月の光は、街灯によって、陰暦の頃とは別物だからです。

 さて、もちろん、陰暦の月初めにおいて月の姿は見えません。ですから、四月十五日前後を考えて詠みました。


―――――

今こそは 一白ひとしらがさね うすら夜の 白影になほ 涼しかるらめ

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[散文取り]

 清少納言『枕草子』〔五段〕四月、祭のころ……



れい元年六月十八日)(二〇一九年)(夏歌なつのうた

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