第29話 聞き込み調査
結論から言えば、次の日も、また次の日もメリーの親は現れなかった。
俺とペレグリンの二人で村のあちこちを歩き回り、メリーのことを知っている者がいないか探すが 例のいじめっ子以外にはいない。となると、後メリーを知っているのはクロエだけか。
メリーの親と同様に、クロエと謎の男も姿を現さない。まさか、村を出て行ったか?
これじゃ、事件をパパッと解決は難しい。
最も手っ取り早いのはメリーに全てを喋ってもらう方法だが、それがなかなか難航していた。
「メリー、辛い思い出をひっくり返すようで申し訳ないんだけれど、この間のことを覚えている事だけでも喋れるかな?」
「あ……うぅ…………」
メリーは、事件の話をしようとすると何故か躊躇いがちに言葉を詰まらせてしまう。そりゃ怖かっただろうし言いたくない気持ちはよくわかるけど、話してもらわなきゃどうしようもない。
「ペレグリン、君が知っていることから考えるしかないよね」
「そうっすよね……でも、俺が知ってることって言われても……うーん」
俺たちが考えている間、ジークヴァルトは本館で悠々自適に暮らしている。いつも通りの生活で、メリーの事件を考えているようには見えない。
この野郎、少しは協力しろよな……。
となると、頼れるのはトワルのメンバーだけ。
今度の集会で議題に出してみるか。
そういや、この間の議題に挙がっていた不可解な事件も未だ解決できていなかった。あの、奴隷が何人も森の中で殺された事件。
のんびりしているように見えて、あの村は物騒極まりないな。
トワルのメンバーなら、こういう事件とかにも慣れていそうだしすぐ解決するかもしれない。
だが……だがっ‼︎
それでは、俺の立場がない‼︎
ここは、幼いこの俺が事件をパパッと解決‼︎
すごーい!かっこいい‼︎
美しいだけじゃなく、勇気もあるのね‼︎
さっすが!
なーんて感じにしたい‼︎
となると、俺自身で解決しなくちゃな。
あくまで、情報だけが欲しい!
「坊っちゃん、そんなジッと考えて……俺とメリーの為に……‼︎」
「いや、別に……あ、いや、勿論‼︎大切な友達の為に頑張るのは普通のことだよ。気にしないでね」
「坊っちゃん……俺、ずっとルカ坊っちゃんについて行くっす‼︎」
うるさいペレグリンを放っておいて、メリーの情報収集に時間を割く日々が続いた。
*********
「で、どうだ、彼の様子は」
二人が村で必死に聞き込みをしている間、ジークヴァルトの自室では電話口から楽しげなクリスチャンの声が漏れていた。
「情報収集を村で必死にしているよ。ペレグリンと二人でね。あちこちを調べまわって、大変ご苦労なことだね」
「ふーん……なるほど、勤勉で素晴らしい教え子だな。素直なことは良いことだ、子供なんだから」
「……子供、ねぇ」
ジークヴァルトは乾いた笑い声を出すと、手元の書類をパラパラとめくる。そこには、殺された奴隷たちの死体の写真が所狭しと貼られていた。
「で、例の件はどうなったんだい。ボスから聞いた通りに動いているのかな」
「あぁ。ロレンツァからの知らせはないから、変更はないだろう。それに、彼方も彼方で順調に準備を進めてくれているようだから、予定通りに事は運べそうだ。これも、彼のおかげだよ。で、その本人はそこに居ないのか?」
「いるわけないだろう。別館へ追いやったよ。君は知っているだろうけれども、私は面倒が一番嫌いなんだ。私の住まいを荒らされるのは困るね」
「はははっ、酷い先生だ。今頃、彼は寂しさでベッドを濡らしているだろうね」
「ふっ、まさか。彼はは、君が思っている以上に図々しく、生意気で、子供らしくないんだ。きっと、自身の城を得たつもりで踏ん反り返っているはずさ。可愛らしいオトモダチも出来たわけだしね」
「ほんと、素晴らしい働きだよ。ボスも大層喜んでたぞ。優秀な人材が来てくれて嬉しいってな。まぁ、明日でそれが幸運なのか はたまた実力なのか分かるわけだが……」
「確かに、今回の件についてはルカに幸運が訪れたと判断すべきだと思うよ。流石は"神の栄光を受けた子供"。彼には神という偉大なる後ろ盾があるようで、実に結構。まさか、探し物があちらからホイホイとやって来てくれるんだからね……ふふっ」
ジークヴァルトの書類をめくる指が止まる。
そこには、手足に枷をはめられ、耳には1147と書かれた値札をつけられたメリーの写真が一枚だけ貼られていた。
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