第28話 別館へ
「なるほど。つまり、君とそのメリーとかいう子どもが教会のシスターと謎の男に襲われて逃げてきたというわけだね」
「めっちゃ怖かったっす‼︎俺、もしこの力がなかったら、今頃殺されてたっすよ‼︎」
ペレグリンの話は嘘のようではないようだが……あのクロエが人さらい?そんなことをするような人には思えなかった。
それに、なぜメリーなんだ?
儀式とかなんとかと言っていたらしいが、それも気になるし。
「ペレグリン、君から見てクロエさんがそんなことをする心当たりはないのかな?」
「ないっす!全然ないっす‼︎」
だよなぁ……。
というか、その男とクロエの関係はなんだろう?まさか神父とかじゃないだろうし。
襲われた時のことを思い出しているのか真っ青な顔のペレグリンとは違って、ジークヴァルトは至って冷静だ。
「ニナ、そのメリーとかいう子どもは?」
「屋敷に着いた途端に気を失っていましたので、客人用の部屋で寝かせています」
「そうか」
ニナの報告を聞くと、彼はそのまま立ち上がる。
「じゃあ、ペレグリン。この件に関して分かったことがあったら、後日伝えることにするよ。それじゃ、メリーを連れて帰ってくれるかな」
「え、あ、ちょっと待ってください!まさか、帰らせる気ですか?」
「もちろんだよ」
おいおいおい、待て待て。
さっきまで命からがら逃げてきた二人に対してそれはないだろ……。
まさか、あれか?
完璧主義発動中か?
「二人も大変だとは思うが、これは私の曲げられない理念だからね。申し訳ないがご帰宅願えるかな。メリーという子のご両親も心配なさっていることだろうからね」
「で、ですが、襲ってきた男とクロエさんがまだ村で二人を探しているかもしれません。あまりに危険すぎます」
「大丈夫っす、ルカ坊っちゃん。気を遣わせてしまってすんません。ジークヴァルト様に何を言ったって無駄なのはよーくわかってるっす」
俺の反論を聞いて、コソッと耳元で遠慮するペレグリン。
いや、お前のためじゃない。俺はただ、この事件をこの手で解決しておきたいんだよ。
幼少期に大事件を解決、だなんていいネタだ。
あるあるだが、将来を考えればこれくらいの話題があった方が有利になるだろう。
チャンスが目の前に転がっているというのに、首を突っ込まなくてどうする。
正直、ペレグリンにもメリーにもさほど興味はないが、ここは俺の将来のために利用させてもらおう。
「先生、僕は反対です!二人を放っては置けません!」
俺の力強い言葉に、悩ましげにため息をついたジークヴァルトは めんどくさそうにしながらニナにあれこれと指示を出すとそのまま自室へと戻って行く。
去り際、
「まぁ、君もそれほど完璧ではないわけだし……いずれはこうしていたけれど」
と言ってきた。
なんだ、こいつ。
「ニナ、ジークヴァルト様は何て?」
「ルカ様を別館へお連れするように、との事です。そちらでならば、ペレグリンさんとメリーさんを保護することを許可なさると」
そうきたか。
別館……確か、この屋敷は三つに分かれていたはずだ。一つは、ここ本館。そして山側にもう一つ、ここよりかは小さな屋敷だ。
足を踏み入れたことはない。
つまり、あのロン毛は自分の目につかない別館に俺たちを住まわそうという魂胆か。
慈悲深いんだか何なんだか。
俺とペレグリンは別館へ、そしてニナは俺たちを案内した後にメリーを連れて来るために一旦本館へと帰って行く。
それにしても、別館は本館とは違い随分と手入れが行き届いていない。どこか、生家のような感じがしてならない。
「ルカ坊っちゃん、さっきはありがとうございました。俺、ここから追い出されるって分かってたんすけど、ここしか逃げるところがなくって」
ペレグリンは情けないほどシュンとしてる。
それにしても、こいつ大丈夫か?
年はまだ十代っぽいし、家族とか心配してないのか?
メリーだって、あんなに幼いんだから今頃親が探し回ってるはずだろ?
「あぁ、いいんだよ。気にしないで。でも、家にいる人や仕事仲間とか、連絡したい人は?誰にも言わなくて平気?」
ペレグリンは俺の言葉に、にこりと笑む。
「大丈夫っす!誰もいないっす!」
おい、こいつボッチか?
こんなパリピみたいな性格しといて、それはないだろ……え、マジで?
若干の恐怖を覚えつつも、俺は妙に明るいペレグリンと共に別館を散策する。
なかなか広いが、何はともあれ古い。
ミシミシとうるさい床と、埃のかぶった家具。
こりゃ、ジークヴァルトは足を踏み入れないな……ん、てことは だ。ここなら、きっと察しのいいロン毛もやってこない。
つまりは、俺の自由にできる空間なんじゃね?
ヒャッホーウ‼︎俺の帝国ダァッ‼︎
俺の好き勝手‼︎イェァァァァァッ‼︎
荒ぶる心を抑えながら俺はあちこちを歩き回り、さてどこを自室にしようかと考える。
1番大きく綺麗な部屋がいい。此処が将来、自分の拠点となるかもしれないと考えれば当然だ。
俺は1番気に入った部屋を自室として、それ以外を好きに使うようにペレグリンに指示する。
ちょうどその頃、ニナがメリーを連れて別館へとやって来ていた。メリーは可哀想にブルブルと震えながら、ニナのメイド服の袖をぎゅっと握りしめている。
「やぁ、また会ったね。メリー」
「あ、あ、あっ…………ゔぅ……」
メリーはしゃくりあげて泣きながら、俺に向かって短い腕をめいいっぱい伸ばす。
「うん、怖かったね。もう大丈夫だよ。僕がついているからね」
メリーの手を取り、もう片方で彼女の背中を優しく叩いてあやす。こんな小さな子どもがそんな目に遭ったら、そりゃ怖いしトラウマだよなぁ……。
というか、メリーの親は何をしてるんだ?
連絡入れとかなきゃダメだろ。
「メリー、お父さんやお母さんはどこに住んでいるの?今日はもう遅いし、ご両親も酷く心配しているはずだからね。事情だけでも話しておいたほうがいいよ」
「ひぅっ……お父さん……?お母さん?」
フルフルと頭を振るメリー。
おい、まさか こいつも親無しか?
って、もしそうなら親無しでよく生き延びれたな……。メリーは、一体何者なんだ?
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