第14話 燃える男の登場

言わずと知れた星野仙一であった。

要請に出向いた久万オーナーに最初に言った言葉が、「ここまで低迷したのは、失礼ですがオーナー、全てあなたの責任ですよ」であった。ここに星野の星野たるところがある。中日時代、選手、監督時代を通じて名古屋という土地柄、中部地区の財界人との交流があった。相当の地位の人とも物怖じせずに話せる力を持っていた。

 ロッテから中日に移った落合が星野をこう語っている。

「あの人は野球界の人ではなく、商売人だよ。自分を売ることにはたけている」落合が言うのだから確かだろう。


星野はトレードの名人、口説きの名人だと私は思う。

ロッテから落合博満を4対1のトレードで獲得。関川・久慈 ―大豊、矢野を交換トレードで獲得しセンターラインの補強。パ・リーグ最多勝投手であった武田一浩をFAで獲得。

阪神時代には、2002年オフ、広島からFA宣言した金本知憲、テキサス・レンジャーズを自由契約になった伊良部秀輝、日本ハムから下柳剛・中村豊らをトレードで獲得する。

この補強は翌年の優勝に繋がった。


私が嬉しかったのは打撃コーチに田淵を呼んでくれたことである。男げもある配慮だが、タイガースファンのことも考えてくれてのことだと思っている。大物を使いこなせるのも星野ならではある。吉田以来の優勝を味わせてくれたのである。


さすがの、星野もタイガースの監督は血圧が上がるほど大変だったのだと思う。優勝してあの騒ぎ、もし来年・・と考えたら2年が見切り時と考えたのであろう。優勝しただけではない、フロントも含めタイガースの体質を変えてくれたのである。また、マスコミを敵にせず味方につけるすべも知っていた。万事に抜け目なし。


そして、タイガースブランドを使って一番得したのも星野であるように思える。今は減ったが、TVのコマーシャルを見るたびそう思った。さすが「商売人」である。

ただ、巨人の監督になるとかならないとかミソをつけたと思っている。あれは「原にやらせなさい」一言でなかったかと。

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