第2話 2ページ目 ~帰ってきた街~
「こんな感じだったわよね?」
あの日と似たような白色のワンピースをクローゼットから探しだして姿見の前で確認する。
これ夏用の奴なんで今の季節ちょっと寒いけど今日はいい天気で暖かいって天気予報で言ってたから何とか大丈夫そうね。
「お母さ~ん。ちょっと散歩してくるね~」
「はーいって? え? ちょっとその格好寒くない? 大丈夫?」
「大丈夫! 大丈夫!」
最高の再会を演出する為だもん! 少しくらい寒いとかそんなのどうって事ないわ!
お母さんって肝心なこと聞かなかったのよね。
帰ってきたこーちゃんの家と通う高校。
私は私立の刻乃坂学園だけど、こーちゃんは何処なんだろう?
やっぱり公立かな? 引越しとかで大変だったろうし。
一緒の高校に行きたかったな。
あーーもう一年早く帰ってきてくれたら一緒の高校に行ったのに。
家も分らないし何処に行けば会えるかな?
また私の家の隣に引っ越してきてくれれば良いのに……。
でも私達は運命の二人なんだから神様が絶対引き寄せてくれるわ!
本当今日は良い天気で暖かい。
街を歩いてみたがこーちゃんを見つけることは出来なかった。
ふと昔一緒に寝転がった河川敷の風景が脳裏に浮かんで来た為、その懐かしい記憶に惹かれこの道を歩いている。
本当に懐かしい。
この河川敷で二人一緒に走り回った。
一緒に寝転んで雲が流れるのも見たよね。
この春を感じさせる新緑の匂いも心地良く、小鳥達も春到来に喜びまるで優しい合唱曲を奏でているみたい。
私達の再会を祝福してくれているようだわ。
ふと立ち止まりここから見える街並みを眺める。
この10年街も変わったわね。
ゆっくり変わったところ、大きく変わったところ色々有るわ。
その度にこーちゃんとの思い出が消されていくようで悲しい気持ちになった。
堤防から見下ろすと河川敷では家族連れが楽しそうにバーベキューをしているのが見えた。
そう言えば昔幸子姉さんたちと一緒にバーベキューしたなぁ。
こーちゃんたらお肉ばっかり食べるから幸子姉さんに野菜食べろーって怒られていたのよね。
懐かしい思い出に自然に笑みがこぼれる。
視線を戻し再び歩き出した。
え? あれは?
戻した視線の先には、堤防をこちらに向かって私と同じ位の男の…
こーちゃん!!
…子が歩いてくるのが見えた。
思考より先に大好きな名前が思い浮かぶ。
間違いない! 一目で分った! あれは私の大好きなこーちゃんだ!
大きくなっているけど、あの時の……いやあの時以上に素敵になってる。
神様ありがとうございます。ここで会えるのは運命だわ。
こーちゃん気付いてくれるかな? 気付いてくれるわよね? 私もあの時の服装だし絶対気付いてくれるわ。
私を見て『綺麗になったね』とか『惚れ直したよ』とか言ってくれるかな?
今すぐ走り出して抱きつきたい衝動を抑える。
だってもしかすると私の事を忘れてたりするかもしれないし…。いやそんな事はないわね。
それにこんな素敵になってるんだったら彼女の一人や二人居ても……。そんなの嫌ぁぁぁーー!
大好きなこーちゃんの顔を見るとそんな考えが頭に浮かび急に怖くなってしまった。
ううぅ、どうしようどうしよう。
動揺は表に出さないように気をつけないと。
久し振りに会った恋人が河川敷で不審な動きしているところを見ると流石に嫌われちゃうかも。
平静を装って……。
あっ目が合った。
その時、私の頭は真っ白になった。
真っ白になったままボーっとただ歩く……。
あれからどれだけ時間が経ったろうか?
私がやっと我に返り、辺りを見渡したら空は既に夕焼けで茜色に染まり出していた。
あれれ? ここは何処だろう?
「やってしまったーーー!」
私は堤防の上、夕日が綺麗に写る川の水面に向けて大声で叫んだ。
周りの人がびっくりしてたけど関係無いわ。
でもここからどうやって帰ればいいのかしら?
取りあえず駅に向かいましょう。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
3月2x日(日) 晴れ
今日は失敗しちゃった……(x_x)
折角神様の思し召しでこーちゃんに会う事が出来たのに頭が真っ白になって話しかける事もできなかった。
でも良く考えるとこーちゃんも眼が会ったのに何で声を掛けてくれなかったの?
(`へ´)プンプン
あっそうかこーちゃんも私と同じように運命の再会に頭が真っ白になってしまったのね!
私たち似たもの夫婦かも! 言っちゃった! キャーー☆三
明日こそ運命の再会をちゃんと出来ますように
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
明日はこーちゃんとお話できますように。
そう祈りながら"コーちゃん"を抱きしめて眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます