10年ぶりに彼が街に帰って来て色々大変です。~宮之阪 香織の日記~

やすピこ

第1話 1ページ目 ~帰ってきた街 前夜~


「そう言えば、香織ちゃん。あ~香織ちゃんは覚えてるかな~? 小さい時仲が良かった男の子。牧野 光一くん」


 ある日突然お母さんがそんな事を言ってきた。

 牧野 光一……、その名前を忘れるはずが無い。

 いまだに幼馴染の彼のことを思い出すと胸が張り裂けそうになる。

 いまだにあの別れの日を夢で見ると悲しさに飛び起きて目から毀れる涙を止められない。

 いまだに私の大好きな人……忘れられるはずが無い。

 その彼の名前をなぜお母さんは今頃言い出したのか。

 疑問と心の底に沸いた微かな予感に胸が高鳴るのを覚えた。


「先日光一くんのお母さん、美貴さんに商店街で久し振りにばったり会ってね。懐かしくて色々話しちゃったのよ」


 お母さん! その部分はいいからこーちゃんがどうしたの?

 逸る気持ちが抑えられない。


「なんか世界中仕事で飛び回ってるらしいのよ。すごいわよね」


 だーかーらー! こーちゃんはどうしたの?


「この前はヨーロッパの方に行ってたんだって。パリとかフランスとか色々な国行ったらしいわよ。良いわよねぇ」


 フランスの首都がパリだ!


「そんな事よりこーちゃんがどうしたの?」


 なかなか話の本筋に辿り着いてくれないお母さんに対して待ちきれなくなりこーちゃんの事を問いただした。


「あーーごめんごめん。なんかねまたこの街に引っ越して来たんだって。光一君もこっちの高校に通うみたいよ」


 嘘? 嘘? 本当に? 夢じゃないの? こーちゃん帰ってくるの? 小さい時の約束覚えてくれてたの? でも10年も経ってるのよ? 私のこと忘れてるかも……。いや私も覚えてるんだもの。こーちゃんも忘れてる訳無いわよ! きっとそうよ!

 あまりの事に私は舞い上がってしまった。

 その後お母さんが何か言っていたが耳に入ってこなかった。

 日記に今日の思いを書いておこうと思う。


―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*


 3月2x日(土) 晴れ

 高校生活まで2週間を迎えた今日。お母さんからとても嬉しい事を聞いたの。

 あのこーちゃんがこの街に帰って来てるんだって!

 キャー(^o^)

 うれしいうれしいうれしいよ~!

 私に会いに戻ってきてくれたのかな?

 でも帰ったのなら何で直ぐに会いに来てくれないんだろう?

 恥ずかしいのかな? そうよね。

 だったらこっちから探しに行ってあげようっと☆三

 さよならしたあの日の格好と同じ服を着て出掛けよう。

 同じ格好の私を見たら驚いちゃうかな?

 あー楽しみ。


 ―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*


「よしっと。明日本当に楽しみ」

 私はあの日プレゼントとしてこーちゃんに貰ったマスコット人形の"コーちゃん"を握り締め明日来る再会に思いを馳せ眠りに付いた。

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