第15話 新たな謎
4台が綺麗に並んで最終コーナーを抜ける。ゴールラインまでは200メートルを残すのみとなる。ピットにいた太一は、まりえとあおいを連れて、ホームストレートを走ってくる4つのマシーンが見易い位置に移動し、アイリスに向かって叫んだ。
「アイリス、頑張るんだ!」
「ペダル踏んでー!」
「勝つは、必定!」
最後の応援というわけだ。アイリスが頑張り、優勝すれば、自分のミスが帳消しになる。そう思うと太一は自然に大声を出していた。アイリスからも、その姿が見えた。アイリスにとっては、太一の応援が、何よりも励みになった。
あと150メートル。アイリスのマシーンは少しずつSとの差を縮める。SもCに、CもHに少しずつ追いついていく。あと100メートル。4台のマシーンが完全に横並びとなった。
「なっ。何だ、あれ!」
「わぁっ! 危ないよぅ」
「まったく。何なのよ、今の、何、かしら……。」
そのとき、正体不明の4つの塊が、猛スピードで走るマシーンの上を、さらに速く、しかも音もなく、マシーンの背後から前へと飛び越えていく。太一が叫んだときには、それらの塊はゴールラインを超えて、サーキットの先の茂みに達していた。遅れて突風が吹き、それよりもさらに遅れて、4台のマシーンが唸りを上げて走る。
4つの塊はあまりにも速くて、止まっている人からは見え難かった。だが、同じ方向に走っているドライバーからだと、速度の差が小さくなり見易かった。それは、人のようにも見えた。だが、常識で考えて、時速80キロメートルで進むマシーンの頭上を飛び越えられる人なんて、いるはずがない。C、S、Hのマシーンが失速する。思わず足の爪先をあげてしまったのだ。危機が迫っての反射的な行動なのだが、もし3人のうちの誰か1人でもハンドルを切っていたら、大きな事故になっていただろう。
「しまった……。」
「ちぃっ……。」
「気を取られた……。」
正気を取り戻し、もう1度アクセルを踏み直したときには、アイリスのマシーンが1車身前に出たあとだった。そして、アイリスのマシーンがそのまま先頭でゴールラインを通過した。こうして、ゴーカートレースはKチームの優勝という結論に至った。だが、この勝負で正体不明の4つの塊という謎がもたらされた。
ゴーカート編 世界三大〇〇 @yuutakunn0031
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