第14話 ファイナルラップ

 ファイナルラップ。並走するSとKが壁となり、前へ行けないCのドライバーには焦りがあった。だから、なるべく落ち着いて対処しようと自分を戒めていた。


「チャンスは必ずある。それを逃さないことに集中するんだ!」


 そうやって声に出す。その言霊が天に通じたのか、Cチームにチャンスが到来する。第12コーナー、前を行く2台のマシーンの間に隙間が生じる。


「よし! 今だっ」


 Cチームのマシーンが、隙間をついて並びかける。


「まずい……。」

「やだぁん……。」


 3台が並んで第14コーナーに突入した。Sが前に行くのをCが抑える。それを今度はKが抑える。横に並んだまま第14コーナーを抜け、逆周りの最終コーナーに差し掛かる。今度はKをC、CをSが抑える。互いが牽制し合い、3台とも前へは出れない。3人共気付かないうちに、スピードが上がっていて、その分Sの内側に1台分の隙間ができる。


「見えたっ!」


 その1台分の隙間へHのマシーンが飛び込んでいく。難しいコーナーだが、ギリギリのところで曲がり切る。4台が横一線、僅かに内のHが先頭だ。タイヤ1つ分の差で、S、C、Kの順番になる。

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