第9話 Cチームの底力
「あおい、すごーい!」
「ま、ポールトゥウィンも夢じゃないっしょ!」
まりえがいつも通り大袈裟に騒ぐ。まことも素直に脱帽。Kチームは大いに盛り上がる。だが、初心者の彼女達は専門用語を使いこなせず、誤用する。あまりの奇蹟に他のチームは意気消沈、突っ込む気さえ失せていた。
そんなことになっているとは全く気付かないまま、あおいがこのコースで最後のストレートに入り、グングン差を広げていく。そして、ヘアピンの3コーナーをまわり切り、テクニカルエリアに差し掛かると、列を組んだ3台のマシーンとすれ違う。
「えっ、どうして私が先頭なのよ! しかも、こんなに差がひらいてるなんて!」
あおいは、映画の撮影では1度もマシーンを走らせていない。だから、自分がどれほど速く走れるかを客観的に理解していなかった。体重が軽いと圧倒的に有利なのは知っていた。映画で描写されていたからだ。だが、自分が今トップを走っているとは、まったく思っていなかった。フリー走行を楽しんでいたのと同じ気持ちで走っているだけだった。
12もの連続コーナーのあるテクニカルエリアで、Cチームは少しも慌てずにSチームの直ぐうしろに付ける。少しでも隙があれば、いつでも抜くという構えだ。だから、SチームのドライバーはKチームを追うことよりも、Cチームに抜かれないことに神経を使わざるを得なかった。
「くっそう! 少しも気が抜けないじゃないかっ!」
「若いの。いつまで粘れるかな⁉︎」
トップと2番手、3番手と最後方の差はジリジリとひらいていく。その分、2番手争いは熾烈を極める。Sチームのドライバーは、コーナーに入ると蛇に睨まれた蛙のような気持ちになった。それでも、ストレートスピードには自信があるから、3周目までは何とか持ち堪えた。
だが、それが限界だった。Cチームのドライバーは、3周目の最終コーナーを前にしてわざと少し間隔をあけた。それで安心してしまったのがいけない。Sのドライバーはストレートに入ると一瞬、気を抜いてしまう。だから後輪が横滑りをはじめているのに全く気付かず、アクセルを踏む。
ーーキュルルルルッ!ーー
Sチームのマシーンは簡単にスピンしてしまう。それを待っていたかのように、Cチームのマシーンが加速。隙間のできたインを突いて前へ出る。Hチームも直ぐにSチームに追いつき、追い越した。
「気の毒だが、ねんねの時間だ!」
「くっ。完全にやられた……。」
順位は入れ替わり、K、C、H、Sとなった。
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