第7話 フォーメーションラップ
ルールは簡単。40周走って先にゴールしたチームの勝ち。5週毎にドライバーを交代する。
レース開始前、整備に最も長い時間を費やしたのは、場長率いるCチーム。彼等の本職はサーキットの管理・運営だが、エンジンやシャーシの整備も日常の業務の1つ。その持ち味を遺憾なく発揮して勝利を目指す、優勝候補だ。
SチームことSAIKYOUの持ち味は、計算され尽くしたルートを行く走り。彼等は常に二兎を追っており、レースにおいても速さだけではなく美しさをも追求する。持ち前のコーナーワークでチェッカーフラッグを目指す。
卑裏悪の特徴は、何と言っても速さ。普段は太一達以外には意外と紳士的な態度の彼等も、コース上では豹変。縁石を一杯に使ったアグレッシブな走りを見せる。多少ラフな走りだが、直線でのベタ踏み勝負に持ち込めば、勝機はある。略してHチーム。
太一達には確立された走りのスタイルは何もない。あえて言えば、若さと度胸で成長する走りができるかどうかにかかっている。平均体重が他のチームより20キロ以上軽いというのを活かせるかどうかが、勝利へのカギを握る。Kチーム。
ポールポジションを獲得したのは、優勝候補筆頭のCチーム。太一達が20分走り続けて叩き出したラップタイムを、経った1度の周回で叩き出した。
「まだストレートのスピードが甘いなぁ……。」
「なるほど。ああいうラインの取り方もあるのか」
「今回は長期戦。気合い負けしなければ、勝機はある!」
「ま、ここは奴等の庭ってことっしょ!」
フォーメーションラップにはいる。隊列は、C、S、H、Kの順。Cの直ぐあとを走るSのドライバーは、走行ラインの確認に余念がない。一言に走行ラインといってもマシーンの特性によって何通りも存在する。だから、走行ラインを特定することは、マシーンの特性を把握することにつながる。マシーンの特性は、一長一短なのだ。だから、Cチームがマシーンの長所を強調した走行ラインを通れば通るほど、自身の弱点を曝け出したのと同じになる。Sチームが知りたかったのはそれだ。
ーースマン。走行ラインを変えられた……。ーー
ーーなぁに、予想通りさーー
ーーそのうち馬脚を現すだろうさーー
ーーそう簡単に手の内を晒しちゃくれないよーー
無線で連絡を取りあい、状況の確認を怠らないSチーム。レースは既にはじまっているということだ。だが結局のところSチームはCチームのマシーンの秘密を何ひとつつかめないまま、最終コーナーをまわる。
「あおい!」
「頑張ってー!」
その最終コーナーをまわり、ゆっくりと第4グリッドに向かうあおいのマシーンに、まりえとしいかが黄色い声援を送る。呑気にもほどがある。さすがに今度ばかりはビギナーズラックとはいかないのだろうか。
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