第5話 フリー走行
サーキットは1周約50秒。8台が同時に走ると危ないので、適度な間隔を空けて3台ずつがタイムトライアルをすることになった。1度スピンをすると10秒ほどのロスタイムが発生するため、スタートを16秒ほどずらして発進。太一も含め、はじめのうちはスピンすることが多かった。だが周回を重ね次第にスピンは減り、タイムは伸びていった。最速タイムを記録したのは太一。
「47秒96!」
「太一くんったら、やるじゃない」
「あっ、優姫がピットインしたわ」
「じゃあ、次はまりえね」
8人共、走る度にラップタイムを伸ばしていく。そんなとき、ある団体がやってくる。チームSAIKYOUの面々だ。
「あれ? 2時からは俺達の貸切だよなぁ……。」
「そう聞いてやってきたんだが!」
「たかたん、一体どういうことだ?」
「……クラブハウスへ行って確認してくるよ」
たかたんが場長に確認すると、ダブルブッキングが発覚。場長が優姫に見惚れ、たかたん達の予約を忘れていたのが原因。
「なんてこったぁ!」
「今、場長が先方に交渉してくれることになったから、少し待とう」
「映画の所為で、にわかが多くて困ったもんだなぁ」
ピット前でたむろするたかたん達。そこへ、1台のカートがピットイン。猛烈な速度でたかたん達の前を通過する。
「わぁおぅ、危ない!」
「まったく。何なんだ、今の車!」
30メートルほど進んだところでカートは止まる。降りてきたのはまりえ。
「今は、まりえ達の貸切なのよ!」
さっき言われたことを、今度は言い返す。人間とはげにあさましき!
「そのことなんですが、実は……。」
場長が慌てて説明に入る。
「じゃあ、貸切時間が短縮になるの?」
「はい。誠に申し訳ございません……。」
急に押しかけて特別待遇をしてもらった立場上、普通は引き下がるものである。だが、まりえには少しだけ常識が欠けていた。
「こうなったら、カートで勝負だ!」
「望むところだ!」
まりえは言いたかっただけなのだが、たかたんは間髪入れずに受けて立つ。そこへ、空かさず割って入ってきたのが、卑裏悪のメンバーだった。
「ちょっと待った! 俺達にも参加する権利があるぜ」
背筋を伸ばして腕を組む。ニヒルな笑いまで見せている。完全にキメにいった言い回しだった。だが……。
「えーっと、どなたでしたっけ?」
あえなく轟沈する卑裏悪のエンバーだった。
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