第2話 サーキットに着いたよ

 とあるゴーカート場。


 ホームストレートは300メートル。

 大小15ものコーナーを配した本格的なコースレイアウト。


 序盤はスピードエリアが続き、

第3コーナーのヘアピンを境にテクニカルエリアとなると、

連続コーナーがカートの行く手を阻む。


 プロレーサーを目指す少年から家族連れやカップルまで、利用者の幅は広い。

 この日も、太一達が現場に着くと、既に走行しているカートがあった。

 どうやら、本格的な持ち込み車両のようだ。


「天気も良いし! なんか、わくわくだよ!」

「ふーん。割と本格的なサーキットなのね」


 まりえは都会のとは違う新鮮な空気を思いっきり吸いながら、無邪気に振舞う。

 全身を布で覆ったいつもの格好をしたあおいが感心して鼻を鳴らす。


 その直ぐ横を4台のカートが猛スピードで通過する。

 鉄壁のあおいは無事だったが、まりえのスカートはひらりとめくれた。

 あわやパンツ丸出しとなるところを手で押さえながら言う。


「わぁっ! 危ないよぅ」

「まったく。何なのよ、今の車!」


 30メートル程先でカートが順に止まり、男達が降りてくる。

 非リア感丸出しの冴えない男達だ。

 あおいもまりえも詫びにくるのだと思ったが、違った。


「今日の午前中……。」

「ここは俺達の貸切なんだぞ」

「邪魔だからあっちへ行け……。」

「……まっ、また貴様等かっ!」


 男達は、卑裏悪のメンバーだった。

 はじめはまりえとあおいだと思っていなくて声をかけたようだ。

 それに気付いてさらに怒りを露わにしている。


「えーっと、どなたでしたっけ?」


 そんな男達にまりえは容赦ない。

 サバゲー場のこともそう。東京異世界ランドでのこともそう。

 全く覚えていないといった感じであしらう。

 太一は酷い仕打ちだと思ったが、まりえは本当に忘れているようだ。


「くぅーっ! こうなったら、カートで勝負だ!」


 熱り立つ卑裏悪。まりえは珍しく冷静に言う。


「いや。私達は遊びにきただけなんで勝負とかそういうのはちょっと……。」


 まりえに全く相手にされないことに、地団駄を踏んで悔しがる卑裏悪。

 そこへ、優姫が戻ってくる。サーキット使用の手続きにクラブハウスに行っていたのだ。


「無料講習会付きで、12時から3時まで自由に使って良いですって!」


 しかも、シャワー付きの更衣室とグッバイドリンクのおまけもある。

 まことが想定していた交渉結果よりも格段に高待遇だ。

 こうして、卑裏悪の貸切が終わったあとは、太一達が貸切で使うことになった。

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