第5話
又八と老婆は互いに這いつくばって頭を向かい合わせにしている。又八が頭をぶつけたのは老婆の額だった。あまりにも近くに老婆の顔があったのだ。老婆の肌は腐った流木のような色で髪はあるのか無いのかわからない。顔中に深く刻まれた皺からは小さく黒い無数の蛆虫がわいている。埴輪のように落ちくぼんだ目は焦点が定まっていないが、確かに又八のどこかを見ている。口というよりはただの穴が空いていて、ひゅーひゅーという息の音が聞こえる。その穴からは蛆虫が出たり入ったりしていた。先ほど腐った卵の匂いがしたのは老婆の口からだったと又八はこの時気づいた。
「、、、、、ぃぃぃっぃっぃぃぃぃぃぃぃいっぃ」
それは人間の声と呼べるものではなく未だ見たことのない動物の断末魔のようだ。その恐ろしい声を聞いた瞬間、又八は逃げようと今来た道を後ろ向きに這い出した。
「こんなところで手でも掴まれたら動けねぇ」
狭い穴である。当然体をぶつけながら戻る。腕や足は何度ぶつけたかわからない。頭も天井にぶつけて血が出ている皮膚が裂けたようだ。その時に髪も大量に抜けた。
「ぉぉぁぃぃぉぁぃぃぃぃ、、ぃぃぉぉぃぃ」
老婆も又八を追いかけて這って来ている。
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