第3話

三日間山を歩き続けた又八はやっと洞窟に辿り着いた。

もう夜は深い。近くに湖があるのか月は薄い水色の光を帯びて又八だけを照らす。

光を帯びた又八の横顔は美しかった。洞窟の中には光は一切届かず全く見えない。吸い込まれたら二度と出て来れそうにないと感じさせるような闇がそこに空いている。風が木の葉を揺らすざわざわという音だけが聞こえる。

「洞窟というよりただの穴だな」

それくらい狭かった。又八は小柄だったがその彼がやっと這って進める程度の穴なのだ。

又八はしゃがんで頭だけを入れてみる、なんとか入る。

次に肩を入れてみる。これもなんとか入る。這うように進んで腰のあたりまで

穴に入ったところで、頭を上げてみた。すると距離はわからないが闇の先で少し銀色に光るものがある。山の裂けたところから少しばかり月の光が入り込んでいるようだ。又八はそこに向かって進むことに決めた。

「これは頭が当たるな」

穴は狭く頭を上げていると天井にこすりながら進むことになるので頭を少し下げないといけなかった。両手両足を使いゆっくりと胴体を運んでいく。その姿を上から見る事ができればそれは虫が歩くような姿だった。洞窟の硬い岩にこすれるあまり肘や膝が痛み出したが、構わず這って進む。

「もう少しで光の見えたところに着きそうだ」視界に入る光の量が多くなってきた。

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