216話 さらに縁を深めて

「祐くんその縁結びの神様の神社ってどこにあるの!? あっち? それともこっち?」


 俺の手を引いて右往左往する葵。はやく行きたくて仕方がないらしい。


「葵、一回落ち着こう。深呼吸。はい、すーはーすーはー」


「すーはー。うん。落ち着いたよ。それでどっちに行くの?」


 落ち着いたのかちょっと微妙だけどここに突っ立っているわけにもいかないし早速行こうとしよう。


「ってこんなに近いの!?」


 葵の手を引いて歩くこと 2分。目的の神社にはすぐに到着した。葵はかなりびっくりしていた。


「本当にすぐそこって感じだったんだ。あ、鳥居のところにえんむすびの神って書いてあるね」


「じゃあ早速入ってみようか」


 階段を上って鳥居をくぐると大国主命がの像が笑顔で俺たちをお迎えしてくれる。


 そしてまずは神社を参拝。色鮮やかな朱色の本殿だ。


「おぉ! 祐くん祐くん! 恋のお守りだって!

 これは買うしかないよね!」


「ちょっと待ってちょっと待って。先にお参りしとこうよ」


 神社に入った瞬間テンションが爆上がりの葵を再度落ち着かせながら中へ入っていく。


「ねぇねぇ恋占いの石だって」


 葵が指差したのは恋占いの石と呼ばれるもの。


 これは本殿前に2つある石を目を閉じて一方から一方へ行けたらたどり着くことが出来れば恋の願いが叶うというものだ。


「私たちもう結ばれてるけどこういう場合どうなるのかな」


「恋愛って付き合うまでじゃないだろ? そこからが本番なんだから」


「祐くんすっごく良いこと言うね! その通りだよ。やっぱり祐くんと結婚したいし、そのあともずっと一緒にいたいもん。えへへ」


「そう言ってくれて本当嬉しいよ。じゃあ俺たちがずっと一緒に居れるように神様にお願いしに行こうか」


 そして作法に則って神さまに葵とずっと居れますようにとしっかりお願いした。後ろで人が待ってなかったせいかかなり長くお願いしていた気がする。


 と、ここで横の葵をみるとめっちゃ頭を深く下げてずっとお願いしていた。その姿は俺の知っている中でも最高レベルの真剣さを出している。


 その姿を見て俺はとても嬉しかった。葵が本気で俺のことを考えてくれているから。


 そんなことは分かっているけどこうした時にすごく実感する。葵がここまでしてくれているのだから俺ももっと神様にお願いしよう。ちょっと図々しいかもしれないけど。


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