212話 銀世界

 入場券を購入していざ慈照寺の中へ。


「わぁすごい……」


「これはやばいな……」


 入った瞬間に一気に世界が変わった。そうとしか言いようがないくらいの感じだった。


「と、止まってたら他の人に迷惑だから進もうか」


「うん」


 俺も葵も一瞬で心奪われてその場から動けなかった。


 the日本庭園。確か足利義政が建てたはずだから造られて500年くらいだろうか。


 たぶんこの景色を足利義政も見たのではないだろうか。そんなことを考えると感激だ。


「写真も撮っていいらしいし撮っておこうよ。ほら葵。はいチーズ」


「えっ? あっいぇい!」


「うん。葵と銀世界が絶妙にマッチしてる」


「ちょっと急はダメだよ。変な表情だったらどうするの」


 そう葵が抗議してくるけどそんなことはない。ばっちり可愛い葵が俺のスマホに映っている。


「大丈夫だって。それに自然体の葵って滅多に写真に撮れないから」


 やっぱりカメラを向けるとそれなりに写真を撮られるようの表情になってしまう。葵が写った写真どれもいいけどこの無防備な感じもまた良い。


「それなら今度祐くんの隙を狙って私も撮ってやる!」


 葵が変なことに燃えている。まぁこういうのはすぐに忘れるだろう。


「祐くん祐くん! こっちからだと銀閣のベストショットスポット! 教科書にある写真とかここから撮ってるのかな」


「あぁすごい。雪とかも相まって最高だ。ここだけで一日中いれる気がする」


「祐くんほんとにこういう場所好きだったよね。小さい頃はよく分からなかったけど今なら分かるかも」


 小学生の時太宰府に俺と葵の家族で行った時葵は全然こういうものには興味なかったもんな。


 それがある意味普通だとは思う。俺もめっちゃ好きではなくて良いなって思うくらいだったし。精神年齢がおじさんなわけではないので言っておく。


「祐くんもっとあっちまで進んでみよ」


「そうだね」


 ということで庭園を歩いていく。


 隅々まで手入れが行き届いてる。さすが国宝。


 何枚でも写真を撮ってしまう。銀閣と葵だけで相当な枚数になってしまった気がする。


 すごいぞ京都。まだ序盤なのにこんなラスボス級の建造物を観れるとは。


「あ、祐くんこっち階段! 行ってみたい!」


「もちろん」


 そして階段を登ると銀閣を上から眺めることができる場所に着いた。


「すごいすごい! ここからだと銀閣だけじゃなくて慈照寺全体をみれるじゃん」


「むぅ……」


「あれ? どうした葵」


「祐くんが私じゃなくてずっと銀閣の方に意識があるのにちょっと嫉妬してた」


 やばい。葵がめっちゃ可愛く見えてしまうんだが。いつも可愛いけどそれ以上に。


「いつも俺の心は葵で満たされてるから。大丈夫」


「うん。ありがとう祐くん」


 雪の魔法ってすごい。こんな威力があるとは。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る