205話 ハイテンション

 最高の夕食を食べおわった俺たちは自分たちの部屋に戻った。満腹で動ける気はしない。


「俺もう大浴場行かなくていいや。部屋のシャワー浴びて寝る」


「おいおいそれはないだろ! 裸の付き合いってのがあるんだからさっさと大浴場行くぞ! ワンチャン若宮ちゃんの浴衣とか見れるかもしれないぞ」


「おいおい進。準備はまだしてないのか? 早くしないと置いて行くぞ」


「変わり身早すぎだろ……。俺も春香と会いたいし祐輔のこと言えんが」


 そう。これは仕方ない。たしかに疲れたけれどそんなことどうでもいい。葵の浴衣とかみたいに決まってる。


「いいよなぁ彼女持ちはさ。俺は麻倉さんとまだ付き合えてないってのに」


「まぁまぁそれは拓哉の頑張り次第だから。こうして俺たちの見てると羨ましいだろ? それをパワーに変えるんだ」


 進の謎理論。本当にパワーに変わるんだろうか。


「よっしゃ! そうだな! 俺もこんな羨ましい関係になれるように頑張らないと!」


「本当にパワーになるんかい! リア充爆発しろとかそう言うのがセオリーだろ」


「今の俺にそんなことを考えてる暇などない。ということで風呂行くぞ」


 なんか無駄にカッコ良くなった拓哉を先頭に大浴場へと向かう。これ俺たちが協力しなくても自分の気持ち素直に伝えられたら告白成功するんじゃないか?


 そんなことを考えながら大浴場へ着いた。


「うん。もうすごいとしか言いようがないな。ここ作った人センス良すぎだろ」


「同感。とりあえずゆっくり浸かろう。あ〜すごい気持ちいい」


「その言い方すごいおじさんぽい。疲れてたし分からんことないけど」


「なあ祐輔。こういう時って隣から女子たちの声が聞こえてくるもんじゃないのか?」


「知らんわ! そんなこと普通はないの! 進、お前煩悩の塊って感じだな。何があった」


 いつもの進はこんなこと言うタイプじゃなかった。なんか修学旅行テンションなのかやばい発言しかしてない気がする。


「俺はなぜかこういうところでテンションハイになってしまう癖っていうかなんていうかな。遠征行く時とかは我慢してるんだけど今日は我慢できませんでした」


 初めて知った。進にそんなのがあるなんて。長いこと一緒にいたけど知らなかった。


 ただちょっとそのテンションの上げ方はアウトだと思います。


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