203話 夕食だよ

「あ、そろそろ時間だな。遅れるといけないから行こうか」


「夕食楽しみなんだよなあ。めっちゃでかいステーキとか出てくるのかな」


 夕食を楽しみにそんな話をしながら俺たちは集合場所のホールへと向かって行った。




「あ、祐くーん!」


「葵〜!」


 ギュッ! 


「この2人なんなんだ…?」


 どこからかそんな声が聞こえたけどそれには気にせず軽くハグを…


 って軽く抱きしめようとした瞬間、葵にかなり強くぎゅーっとされてしまった。肋骨折れるんじゃないかというレベルで。


「あ、葵…どうした。なかなかに激しい抱擁ですね」


「うんっ! なんだか今すっごく元気でさ! それでなんかいつもより強くしちゃった!」


「そ、そうなのね。分かったけど今度からは優しくね」


「それは無理かも。今のすっごく良かったから」


 無理だったらいずれ俺の肋骨ボキッといくな。今度からどうしよう。


「祐輔、早くホール行かないと。若宮ちゃんとイチャイチャしてる暇なんてないぞ」


「うるさいわ! でもそうだな葵、行こう」


「うん! 楽しみっ楽しみっ!」


 ルンルン笑顔で俺の隣を歩く葵。もちろん手を繋いで。後ろにいる葵と同じ部屋の女子たちがニヤニヤしてみてくるけど気にしない気にしない。


「わぁすごいね祐くん! こんなに大きなお肉食べるのは初めて!」


「ほらほら春香。写真撮っておこう。はい、チーズ」


「すすむ! もうちょっとこっち寄ってくれないとフレームに入らないよ。そそそこれでよしっと」


「…」


「これでいいか春香。それじゃあもう一回はいチーズ」


 俺の正面で風間カップルがイチャイチャしてる。右斜め前には忍田のカップル左斜め前には宗一郎カップル。言わなくてもいいかもしれないけど両サイドにはまたカップル。


「なんでこうなった…」


「祐くん祐くん! 私も写真撮りたい! この豪華な料理をバックに」


 何個かの大きなテーブルに並んで座ったのだけどまさかこんなことになるなんて。


 部のみんなで座ろうってなったのはいいんだけど。これみんながみんな彼女といちゃついてるだけだよね。


 みんな合わせてうちの部だとは前に言ってたけどみんな自分たちの世界に入っちゃってるよ。


「祐くん何難しい顔してるの? ほらほらせっかくの夕食なんだから。写真撮ろ!」


「そうだな! 変なことは考えるのやめよ。葵とは楽しい思い出欲しいしね。後で鈴に自慢しとこ」


「そうだね。私もお母さんに写真送ろうっと」


「それじゃあ、葵」


「うん! こうしてほっぺたがくっつくくらいに…よし!」


 パシャ


 うん。すごい良い1枚が撮れた。すごい良い笑顔。後ろの料理は全然見えないけど葵の最高の笑顔の写真の方が俺的に価値が高いしオッケーだね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る