201話 漫才のよう
「ホテルの夕食とっても楽しみ!」
「確かに豪華だもんな。すごい期待できるよ」
法隆寺を一通り観光した後俺たちはバスで今日お世話になるホテルへ。
法隆寺で葵がなぜか木刀を欲しがってたけど全力で止めておいた。男友達にも欲しがってた人いたけどそんなに欲しいものなの?
「ホテル着いたら祐くんのお部屋行くね」
「絶対ダメだから。って言うか男女別のフロアだし葵は俺たちの部屋に絶対来れないから」
修学旅行の定番? の異性の部屋に先生にバレずに忍び込むなんてことは無理だろう。見つかれば大事になるし。
「よく考えてたら今日私って祐くんなしで寝るってこと?」
「よく考えなくてもそうだよ」
何を言っているんだ。ちょくちょく葵は変なことを言うな。
「今日から3日間祐くんと夜は離れ離れ…。修学旅行って私たちにこんなにも過酷な試練を課すんだね」
修学旅行ってそんな苦しそうな顔をするもうなものだったっけ? 確かに俺だってほんの少し、本当にちょっとだけ寂しいかなとか思うけどそこまでかな。
「祐くん。どこかで逢引する? なんかそれはそれでちょっと惹かれる」
「それもしないから。大人しくしとかないと。俺がそんなことしたら示しがつかないだろ」
「そうだけどぉ」
むぅ、と口を尖らせる葵。でもこれは言ったらどうにかなる問題じゃあない。諦めるしかないんだよ。
「でもでもご飯の時とかはバイキングで一緒だもんね」
「葵めっちゃ食べて後で痛い目にあっても知らないぞ」
「ふふん。私を舐めて貰っちゃ困るよ。私、こう見えてもよく食べる方なんだから」
知ってるよ。ただたくさん食べても全然スタイル変わんないよな。不思議だ。
「あ、祐くんそろそろ着くって先生が言ってるよ」
「じゃあしばらくは離れ離れだな。葵、ちゃんとしてるんだぞ」
「私。子供じゃないもん! 祐くんと離れるのが寂しいだけだもん!」
それはどうなんだろう。
「祐くん祐くん。お風呂覗きにくる?」
「ぶふぉ!」
急に何を言っているんだ。吹いてしまったじゃないか。いや、まてまて。葵がそんな変なこと言うわけないだろう。聞き間違いってことだ。
「葵、よく聞こえなかったかもう一回言ってくれる?」
「えっ? あ、うん。お風呂覗きにくる?」
「……」
聞き間違いじゃあなかった。葵、ほんとにそう言ったんだ。修学旅行は人をこんなにも変えてしまうのか。
「どうする?」
「どうするって行くわけないだろ! 葵、ちょっと頭おかしくなってないか?」
「そんなことないよ! いつも通りだよ!」
「いつもそんなことは言わなかっただろ!」
このまま俺たちはホテルに着くまで無駄な問答を繰り返していた。
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