185話 手に持ってるのは?

「葵〜。本当にどうするんだよ」


「これはもう仕方ないね」


「仕方なくないよ…」


 まだ正式に立候補届を出したわけではないから出ないっていう手段もないことは無いけどもう無理っぽい。


「ごめんね祐くん。私が勝手にいろいろ言っちゃって」


 さっきの強気な感じは消え失せて、しょんぼりなった葵。


「冷静になって考えたら暴走してたって思っちゃって」


「そんなことないよ。俺のこと思ってくれて出てきた言葉なんだろ? 大丈夫。信じてくれた葵のためにも頑張るよ」


「ふぇーん祐くんー」


 こうなったらもうやるだけだ。頑張るしかない。


「さあ。葵、部活行こう?」


「うんっ! 私も出来るだけ祐くんをサポートするから!」




 ◆◆◆




「お兄ちゃんお帰り」


「うん。ただいま。勉強してるのか。頑張ってるね」


「そりゃあ頑張らないと合格できないからね。しっかりやるよ」


 やっぱり鈴はすごい。鈴も頑張るんだから、俺もしっかり頑張って、鈴が合格した時生徒会長として迎えてあげたい。それはそれでかっこいいかもしれない。


「それでお兄ちゃん何かあったの?」


「え?」


 どれだけ鈴は感が良いんだ。顔を出てる訳でもなさそうなのに。


「さっき葵ちゃんからメッセージ来ててね。お兄ちゃんが困ってる感じで帰って来たら教えてって言われたの」


「そっか…葵、まだいろいろ思ってるんだ」


 大丈夫だって言ったのに。本当葵ってば、俺のこと思ってくれてるな。


「ちょっと葵の家に行ってくる。勉強もし分からないところあったら帰ってから教えるから待ってて」


「大丈夫、大丈夫。気にせずに葵ちゃんと話しておいで」


 鈴って精神年齢だけは俺より上なんじゃないか? 妹っていうよりお姉ちゃんみたいなんだけど。


「それじゃあちょっと行ってきます」





「葵、やっほー」


「ひゃあ! 祐くん!?」


 いつか貰った葵の家のカギを使って葵の部屋に直行。葵が着替えたりはしてないことは葵の部屋に入

 る前にちゃんと葵のお母さんに尋ねてあるので大丈夫。


「何してたの?」


「そ、それは〜あはは。いろいろかな?」


 椅子に座っていた葵は背中に何かを隠すように俺の方へ顔を向けた。めっちゃ怪しい。


「その後ろにあるのなに?」


 これもうあるって言ってるようなもんじゃん。でもこれだけ見られたくない、知られたくないってことは余程のものなんだろう。


 こういうのを無理に詮索するのはいくらお互い大好き同士だとしてもやめておいた方がいい。


「まぁなんでもないならいいんだけど、ちょっと言いたいことがあって来たんだ」


「そ、そうなんだ。分かった。こっちに座って」


 葵に言われたところに座る。葵も俺の横に来ようとして立ち上がった瞬間。葵が手に持っていたものが落ちた…




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