180話 敵?

「なぁ神子戸。本当にやる気はないのか?」


「はい、ないです。すみません」


 選挙についての放送があった日からほぼ1週間が経った。


 今日、俺はすべての授業が終わって葵と部活に行こうとしたところで担任の先生に呼び止められた。


 葵を同席させるわけにもいかないので先に行ってもらって俺と先生は誰もいない多目的教室へ。


 そこで言われたのは生徒会長選挙に出ないかということ。後、3日で受け付け期間が終わるのに誰も立候補していないからだそう。


 例年のこと生徒会長選挙はほぼ信任投票。去年は珍しく2人立候補したのでちゃんとした選挙だったけれども。


 まぁ言っちゃダメだとは思うけど生徒会長にそんなに魅力がないんだろう。うちの学校生徒会って目立たないし。


 でも今年の生徒会は目立ったからやりたい人多いんじゃないのかなとか思ったんだけど…例年通り。


「そうか。まぁ気が変わったら教えてくれ」


「はい。失礼します」


 先生との話も終わって教室を出る。葵たちが待ってるし早く行かないと。


「ちょっと神子戸くん」


 と、廊下をスタスタと歩いて行くと誰かに呼び止められた。声からして女の子だと思う。


「はい?」


 振り返るとやっぱり女の子だった。これで間違えたら失礼だけど。ただ同じクラスになったこともない俺は名前を知らない女の子。


 小柄で髪はポニーテール。ふつうに可愛い感じ。やっぱり葵の方が可愛いとかは言わないけど。


「俺に何か用事?」


「うん」


 その返事の後に彼女の目が鋭くなった。さっきまで優しい雰囲気だったのに何故。


「なんで神子戸くんは生徒会長選挙に出ないの? まぁそれなら私の勝ちってことでいいんだけどさ」


 それだけ言うと女の子はさっとどこかへ行ってしまった。本当になんだったんだ? 


 とにかく部活に行かないと。



 ◆◆◆



「今日の祐くんちょっと迫力みたなのが少なかったみたいだけど何かあったの?」


 迫力ってなんだよ葵。俺そんなの出してたの? ちなみにもう部活は終わって下校後。


「迫力はよく分からないけど何もないよ。ちょっと疲れてたとかかな」


「ふぅん。そうなんだ」


 じろじろと俺の方を見る葵。なんだかその目は「もう知ってるから祐くんの口から聞かせて?」とでも言ってるように感じられる。


 黙っておいた方がいいのかも知れないかけど俺は葵に何かあったら相談するって前に約束したし、さっきのことを言っておこう。


「はぁ、葵には敵わないよ。さっきさ…」


 葵は俺の話をしっかり聞いてくれていた。


「…って感じなんだけどどうしたらいいと思う?」


「簡単だよ。その女の子を倒せばいいの!」


 葵さん。何を言ってるのしょう?



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