181話 ご飯食べたい

「あの葵? そんな物騒なこと言っちゃだめだぞ」


「分かってる分かってる。これは多分祐くんに生徒会長選挙に出ろって言ってだんだよ」


 確かにそう言う風にもとれるけど、そうなのだろうか。


「まぁ俺はする気はないんだけどな。こうやって葵といたいから」


「もう、そんなこと言ったらキスしちゃうぞ」


 俺たちはそんな話をしながら(もちろんキスはしていない)家に帰った。




「ただいま」


『お帰りお兄ちゃん。ちょっとここのところ教えてくれない? 数学なんだけど」


「もちろんいいよ。ちょっと待って。着替えてくるからリビングに居て」


 さっと着替えたら鈴が待つリビングへ。


「お待たせ鈴ってなんで葵がいるんだー!」


 リビングのドアを開けるとテーブルに座って鈴と葵がワークを見ていた。俺が教える予定だったところであろうところを葵が教えてる?


 お兄ちゃん、なんか寂しいよ鈴。っていうか葵も家来るの早すぎでしょ。


「あ、祐くんやっほー。来ちゃった」


 可愛く舌を出してそう言う葵。この顔を見ただけでも今日の疲れが吹っ飛んでいく…ってそうじゃない。


「葵、何してるんだ? まさか鈴に勉強教えてるとかないよな? それは俺が言われたんだぞ」


「え? 私、鈴ちゃんに教えてって言われたよ。私だって頭良い方なんだから鈴ちゃんに教えることくらい出来るよ」


 葵が頭良いことなんて知ってるよ。ただせっかく兄の威厳を見せる時が来たと思ったのに。


 ただ俺と葵がそんなことでいちいち言い合いとかしてたら今が大切な時間な鈴の邪魔になってしまう。俺は今日の晩ご飯を作っておくことにしよう。


 毎度のことながら両親は仕事で帰りが遅いので。さてさて何を作ろうかな。


 冷蔵庫を見ると鶏肉と卵がある。よし、簡単に作れるしこれにしよう。


「鈴〜今日の晩ご飯は親子丼にするけどいい?」


「うん、お兄ちゃんありがと」


「祐くーん。私も祐くんが作ったご飯食べたい!」


「葵、お母さんがご飯作ってくれてるんじゃないの?」


 時々葵が作ってくれたりもしてるけどそういう日はちゃんと親に言っていた…はず。


「そうだった〜ガーン…お母さん、唐揚げって張り切ってたんだった」


 あからさまにがっかりしてるけどお母さんに失礼だぞ。絶対美味しいじゃん。


「葵ちゃん。なら一旦家に戻った方がいいんじゃない? さっき教えてもらったところは分かったからさ」


「ふぇーん。祐くん鈴ちゃんまた後でね」


 葵は美味しい晩ご飯を食べに自分の家に戻って行った。あれ? 何のために葵、家に来たんだ?

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