173話 朝の出来事

 俺と葵はしっかりお互いの大切さを理解し合った後、もう寝ることに。まさかの3人が川の字でだ。


 右から俺、葵、おばあちゃんの順。布団の中で俺と葵は手を繋いでいる。


「それじゃあ2人ともおやすみなさい。明日もよろしくね」


「おばあちゃん、祐くんおやすみ」


「おやすみなさい。葵、寝坊したらだめだぞ」


「しないもん! 祐くん私が寝坊しないって分かってるでしょ! そこまで言うんならもし、私が祐くんより早く起きたらキスしちゃうからね」


 なんて言うことを言うんだよ葵! 前にもそんなこと言ってたけどここはおばあちゃんの家だぞ! 


 こうなったら絶対俺が先に起きるしかない。タイマーの時間いつもより早くしとこう。6時でいいかな。葵は休みの日は7時起きくらいだし。


 こうして俺は眠りについた。




 ◆◆◆




「んっ」


 俺の意識はそんな音と共に少しだけ起きた。まだ夢の中にいるような感じで頭が回らない。ただなんか口の辺りが温かくて柔らかい感触がする。


 よく分からないけどすごい気持ちいい。なんだろうこれ。でも気持ちいいんだしこのままにがいいな…


「んっ、ちゅっ。祐くんなかなか起きないね。もっとしちゃお」


 なんか葵の声が聞こえる。んー。起きないといけないのにこの感覚をもっと感じてたいとか思ってしまう。でもこの感触ってなんだ?


 そういえば昨日葵と何回約束っていうか勝負みたいなことしなかったか? あれ…記憶が鮮明に戻ってくる。


 そうだ。思い出した。先にどっちが起きるか勝負したんだ。早く起きたらキスするとか言ってたよな…?


 そこでハッとした。パチっと目を開くと目の前に葵がめっちゃ笑顔で俺に…キス…していた。


「祐くん起きちゃった? えへへ。おはよう」


「あ、うん…おはよう。何かした?」


 葵はぺろっと舌を出していたずらっぽく笑うと言った。


「キスしちゃった。するって言ってたしいいよね?」


 朝起きたら彼女がキスしてたって最高なんだろうけど、ここはおばあちゃんの家で横か、近くにはもちろんおばあちゃんがいるはずで…


「葵、2つ聞きたいことがある」


「はい、どうぞ祐くん」


 ピシッと指差す葵。


「おばあちゃんは今、どこにいる?」


「おばあちゃんはね、私より早く起きて畑を見に行ったよ。なんでも朝摘みの野菜を直売所に送るんだって」


 それなら俺たちも行かないといけないんじゃ? そう考える俺に葵は分かってるよと言わんばかりに続きを喋る。


「これはそんなに大変じゃないからいいんだって。それよりお昼が大変だからゆっくり休んでって」


「なるほど。じゃあ2つ目。俺さ葵より早く起きるために目覚まし6時にセットしてたんだけど鳴らなかったんだよ」


 今の時間は6時30分過ぎ。セットした時間より、30分遅く起きた。目覚ましは鳴ったのか。俺が無意識のうちに止めてしまったか。


「ふふふ。それはね?」





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