157話 歌う

「すごいすごい! これ最高得点! 95点だって!」


 歌い終わった。終始ノリノリの俺も乗せられてとても気持ちよく歌うことができた。


 それで取れた点がまさかの95点。たしかに音もズレてなくて加点になるらしいやつも出てたけど、ここまでいくとは。


「やっぱり愛の力なのかな? だって私、歌ってて祐くんの愛をめっちゃ感じたもん」


 え? 俺、確かに頑張って歌ったし、楽しかったけれど愛を感じたの!? 俺、感じること出来なかった…


「祐くんも感じたでしょ? 私、祐くんと歌うのとっても楽しかった! 歌ってる横顔も良かったよ」


 あれか。たまにチラチラ見てきたと思ったんだけど。


「俺も葵の愛、めっちゃ感じたよ。そのおかげでめっちゃ楽しい」


 本当は感じなかったけれど、ここは話を合わせよう。ただほんとに葵といる今は楽しい。


「わぁ! やっぱり私たち相思相愛だね! よし、私たち今いい感じだからこのまま次の曲行ってみよう!」


 最初はどれだけ葵のテンション高いんだと思ってだけど、今なら分かる。これはテンション上がる。


「オッケー、葵! 次行こう!」


「祐くんいい調子! 次はこれ!」


 選んだ曲は「ハッピーウエディング前ソング」これ学校でも流行ったやつだ。


 これを選ぶとは葵面白いな。


「さぁ祐くん歌おう!」




 順調に歌っていってる。ただ思うことが。


(この曲結婚とか、キスとか葵と歌って恥ずかしい)


 ノリで入籍は俺はしたくないな。と思いました。


「祐くん93点だって! 私たちほんとすごいよ。それでさ、祐くん…」


 葵の目がトロンとしてる。なんだ葵。危ない気がするよ。


「祐くん、キスして」


「どうした葵? 部屋暑い?」


「祐くん話逸らさないで! 今私はキスしてって言いました!」


 どうにかして逃げようと思ったのに。えっへんって言ってもすごくないよ。


「急にどうしたんだ?」


「この歌を歌ってたらすっごくしたくなって。いいでしょ祐くん…」


 そう言われて嫌とは言えない。普通は。でもここでするのは抵抗がある。


「キッス! キッス! キッス!」


 歌のリズムに合わせてねだる葵。あぁくそ可愛い!


「一回だけだからな」


「うん。ありがと」


 俺は葵の唇にチュッとキスをした。葵は嬉しそうに指でさっき俺が触れた唇にそっと触れた。


「えへへ。祐くんって優しいから大好き」


「俺だって嫌じゃないからしただけ。でもこういう場所はそれ以上する場所じゃないからね。でも一言言っとく」


「なに?」


「大好き」


 一言、言いたいこと言っておきました。

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