150話 砂浜で
「そろそろ折り返すよ。結構距離行ったし」
「うん。それじゃ後少しでも私も下ろしてもらおうかな」
「分かった。ちょっと葵が下がってきたから一回あげるよ」
少し屈んでよっと葵の体制を整える。そうしたら葵の顔が俺の顔の真横に。
「えへへ。祐くんの顔が横にある〜」
「そんなこと言わなくていいから。それじゃ行くよ」
「むぅ! そんなこと言う祐くんにはこうしちゃお」
正面を向いていた葵が横を向いたと思うとそのままゆっくり顔を近づけてきた。
このままほっぺにキスしてくれるのかなとか俺の頭の中にはそんな考えがあった。そうしてくれるならとても嬉しいと。
でも葵は全然違うことをした。
「はむっ」
「ふわぁ!」
まさかの俺の耳を唇でそっとまるで挟むように、いわゆる耳はむはむしてきたのだ。これには俺も予想外で。
耳が柔らかい感触でゾクゾクする。こんなことしたことなかったのにどうしたんだ。
「ちょっと葵!? や、やめてっ!」
「んーんだーめ。これも私がしたかったことだから。お願い」
俺は腰に力が入らなくなりそのまま膝をついてへたり込んでしまった。地面が砂浜だったから痛くはなかったけれど。
葵はおんぶしたままの状態で未だ耳はむはむを続ける。
「はむっ、はむっ。えへへ。これやってみたかったんだよ。どう?」
「そ、それはっ…」
「んー? どうなの?」
はむはむしながら聞いて来るけど息が上がって答えられない。
「よっと」
我慢できなくなった俺は葵を押し倒すように砂浜に寝かせた。
「はぁはぁ。葵…やってくれたな…」
ちろっと舌を出す葵。怒る気は最初からないけどもう何も言う気がなくなった。
「なんか漫画で耳はむはむするシーンがあったからやってみたの。これされて主人公の男の子喜んでたから」
「いや、どんな漫画だよ。そんな漫画あるの?」
葵が漫画読んでたのも意外だけどそんな描写を描く漫画ってどんな漫画だろ。少女漫画とか? うーん。よく分からない。
「それでどうだったの?」
「なんかびっくりした。まぁでも…いやじゃないかな。腰が抜けるかかと思ったよ。最初」
「なるほど。祐くん私にもやってみてくれる?」
ごく普通のトーンでかなりのお願いをしてきた。
でもさっきので理性が壊れたのか、俺も砂浜に寝転がる葵の耳に近づけた。
そこでふと周りに目線を向けると犬を散歩させているご老人が。
「はっ!」
一気に俺は起き上がり、ぐるりと一周見回した。
「危ない。これ人に見られたら俺が葵を襲ってるように見られただろうな」
今はご老人しかいなかったけれど他にも見ていた人がいたかもしれない。
葵は不服そうな顔してたけど誤解で変な罪に問われたくないのでやめておく。
ただ何もしないのも寂しかったので砂浜でチュッと葵とキスしておいた。
===
ただ今多忙につき更新が遅れています。申し訳ありません
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます