149話 海辺
「ごちそうさまでした」
会計して店を後にする。きっかり2000円。払いやすくて良い。
「それで葵はどうしたい?」
「それじゃあさ、せっかく海が近くにあるんだし浜辺を歩こう」
ザザーっと波が打つ音を聞きながら俺たちは浜辺を歩く。夏場じゃないので人は全くいない。本当に貸し切り状態だ。
砂浜を歩けばサクッという音が鳴る。もうすぐ11月に入ろうかとしているので少し肌寒い気もするけど。
「ちょっと風が強くて寒いからくっつくね」
さっきまで手を繋ぐだけだったのに今は俺の腕に葵の腕が絡まる。さっきより密着度が上がって葵の温もりをかなり感じられる。
そして俺の体の芯が温まってきた。未だこれくらいくっつくと緊張してしまう。
「そういえば今年は海行けなかったね。予定立て込んでたし。プールくらい行けばよかったよ」
「確かに試合に旅行にっていろいろあったもんな。でも今年の夏は最近じゃ1番楽しい夏だったよ。葵がいてくれたから」
今年の夏は楽しかった。いろいろな思い出を作ることができた。今思い出しても本当に充実していたと思う。
「ふふふ。祐くんありがと。私も本当に嬉しかった。祐くんとこうやって夏を過ごせたんだから。一生忘れない夏だったよ」
そうやって笑いながらさっきよりぎゅーっとしてくる。それに釣られて俺からも笑みが溢れてしまう。
「そうだ祐くん。またおんぶしてくれない?」
「え? どうして?」
「まぁいいからいいから。それも私のお願いってことでダメかな? ダメならいいんだよ。ここ足元不安定だし」
「いいや、大丈夫。ただそんなにおんぶしてどうするんだ?」
「それは内緒だよっ」
よく分からんがとりあえず葵をおんぶして砂浜を散歩する。たまに振り返って葵の顔を見るとすごく嬉しそう。
「こうやって小学生の時に私が足を挫いた時おんぶしてくれたよね。あれが本当に嬉しかったんだ。それでちょっと何年振りかわからないけどこうしてしてもらいたかったの」
懐かしいな。あれ公園かどこか行って葵が挫いた時だっけ。親もいないし、携帯とか持ってないし時間も結構暗かったからおんぶするしかなかったんだよね。
最初痛いって泣く葵をなだめるのは大変だった。
「あの時の祐くんの背中今でも覚えてる。すごく頼りになったんだよ。今はあの時より大きくなっちゃって。私を余裕でこうしておんぶしてくれれるんだもん」
昔の話をこうしてしていると本当月日が経つのって早いなと実感する。
葵はたまにぷにぷに俺のほっぺをつついたりするくらいでさっきの怪しかったは俺の勘違いだったみたいだ。
これは何かするとかは無さそうだな。
しかし、それが甘かった。
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