148話 葵のお願い

「ねぇ祐くん。あっちにぜんざいの出店あるから行かない?」


 ちゃんと下山し終わった頃にはもう12時を回っていた。山を歩いてお腹もすいたし少し食べる分にはちょうどよかったので行ってみることに。




「あつっ、あつっ! ふーふー」


 2人分のぜんざいを買ってベンチで食べる。餅が熱々で意外とビッグサイズ。それで小豆が甘くてとても美味しい。


「見てみて祐くん! お餅ビヨーン」


 葵はあの漫画とかで見る餅がめっちゃ伸びるやつを披露してくれた。実際にこんなに餅が伸びるなんてびっくりだ。


「あははっ。こんなことするの初めて。ほらほら祐くんもやってみようよ」


「俺はそんなことしないぞ。それにもう餅全部食べちゃったし」


「もう食べたの!? 祐くん早くない?」


「それは葵が変なことしてて食べるのが遅かっただけだろ。ほらほら早く食べないと冷めるよ」


 葵は急いで食べようとするけど餅を詰まらせないといいんだけど。



「ごちそうさま。美味しかった〜」


 無事詰まらせることなく食べ終わった。最後にお茶を飲んで山を後にした。




「祐くんこれからどうするの? どこか行く?」


 電車の時間を調べる俺に葵が聞いてきた。


「俺のしたいことは終わったから次は葵のやりたかったことしよう」


「え? いいの? 今日は祐くんのご褒美の日で私負けちゃったんだよ?」


 葵は困ったように俺を見つめてくる。すごく遠慮してる感じだ。


「そんなのいいって。葵も頑張ったんだしさ。いろいろしたいことあったんだろ? ならそれしようよ」


「ありがとう。祐くんのそういう優しいっていうか、そんなところ大好きだな」


「そ、そういうのじゃないから。ほら言ってみて? そんな遠くまでは行けないけど」


「うん。でもとりあえずさやっぱりお腹空いちゃったからどこかでお昼食べよ?」


 葵の言う通りぜんざいだけでは全然お腹いっぱいにはならないのでどこかでちゃんと昼食を取ろう。


「ならどこ行く? どこか良い場所知ってる?」


「うーん。あっ、そうだ。あそこなんて良さそうだし行ってみよう。祐くんには内緒」




「お待たせしました。日替わりランチです」


「わわっ。思ってたよりすごいね。ちょっと写真撮っちゃお」


 葵に連れられてやってきたのは3駅ほど戻ったところにある海辺のご飯屋さん。お洒落な雰囲気で千円ワンプレートランチが有名らしい。


 なんでもクラスメイトに教えてもらったらしく、行ってみたかったんだそう。ちなみに今日のメニューはチキン南蛮。


「それじゃいただきまーす」


「それで葵のしたいことはなんなの?」


「それはまだ秘密。ちゃんと時が来たら


 なんかよく分からない感じだったけれど多分どこかに行くんだろうな。葵の言葉が気にはなったがそれよりも、チキン南蛮がめっちゃうまかったので気になったことなんて忘れてしまった。

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