147話 おんぶ

 山を登ること30分。もう半分くらいまで登っただろうか。目の前に小さな池とベンチかあったので、そこで少し休憩することに。


「ふぅ。ちょっと疲れちゃった。祐くんはどう?」


「まぁ、俺はあの1ヶ月間かなり下半身トレーニングしたし問題はないかな」


 そう言って余裕な素振りを見せると葵はニコッと笑って


「なら少しおんぶしてくれないかな?」


 と、言ってきた。


「どうした? 怪我でもした? それならもう下山するけど」


 おんぶしてと言われた時に最初に思ったのは捻挫などの怪我だ。コンクリートなどで舗装されていない土の道だったので、俺の気づかない時に少し捻ってしまったのかも知れない。


 葵はそんな俺の思考を読んでか「んーん」と首を振って答えた。


「ただおんぶされたかったから」


 俺もすぐに言った。


「さっき心配した分返してくれる!?」


 心配して損した。葵は怪我とかじゃなくただ甘えて「おんぶして」と言ったらしい。


「祐くーん」


 両手を広げる葵の姿は少し子供っぽい。そして俺は俺で


「えへへ。祐くんありがと」


 葵のお願いを断ることは出来なかった。今日は俺のお願いを聞いてもらうはずだったのに。俺はかなり葵に甘い気がする。


「よいしょっと」


 持ってきた小さめのカバンは葵に任せて俺は葵をおんぶした。やっぱり軽い。これなら思ったより楽に山頂まで行ける気がする。


「しっかり掴まっててくれよ」


 そして一歩、一歩俺は歩き始めた。紅葉を見に来たのに目的が変わった気もするけどまぁいっか。




 ◆◆◆




「ふぅ、到着!」


「お疲れさま! すごいね。本当に私をおんぶしたまま山頂まで登り切っちゃったよ」


「はぁ、はぁ…なんとかね」


 めっちゃ疲れた。最初は楽々だったけど、後の方はかなり脚にきた。でも、残り少しだったのと俺の意地から最後まで葵をおんぶした。


 俺に乗ってる葵は楽しそうに「頑張れ〜」とか言ってた。


「うーん。すごい綺麗! 良い眺め」


 俺も水分補給して葵の方へ行くと目に入ってきたのは綺麗な赤色の紅葉と広がる街の景色。風が吹けば熱くなった身体にはとても気持ちいい。


「祐くん写真撮ろ!写真!」


 葵も楽しそうで良かった。周りには2、3人いる程度でほぼ貸し切り状態。


「はいチーズ。うん、やっぱり葵かわいい。こういう場所だとすごい景色とマッチしてる」


「もう祐くんそんな恥ずかしいこと言わなくていいから。ほらっ、次は一緒に撮ろ?」


 そう言ってスマホを自撮りモードにして俺に近寄る。


「もう祐くんもっと近づいてくれないとフレームアウトしちゃうよ。ほらもっともっと」


 超密着。ほっぺとほっぺが触れ合いそうになるくらいに。もはやバックの紅葉とか景色は全然分からない。


「はいチーズ。えへへ。祐くんとのとっても素敵な写真撮っちゃった」


 葵は大満足といった感じで写真を見つめている。


 そこからひとしきり楽しんだ俺たちは来た道を手を繋いでゆっくり下山した。



===


評価してくださった方ありがとうございます!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます