146話 お出かけ
ガタンゴトンガタンゴトン。
「わっ、祐くん見てみて! この湖すごいよ!」
電車の車窓から見える景色をみて葵がはしゃいでる。
「ほんとだ。はぁ、あの時なんであんな甘いコースに投げちゃったんだろ」
「もうっ、そう言うのはもう気にしちゃダメだよ。失敗を経験にするのは大事だけど引きずっちゃいのは良くないよ」
俺が気にしているのは昨日あった練習試合。完全復活をして4日が経っての久しぶりのマウンド。全力投球はダメということで俺はこの試合にある目標をもって挑んだ。
それが「葵のミットにしっかりコントロールして全球投げ込む」だ。
日ごろからコントロールには定評のある俺だが昨日はいつも以上にコースを狙って投げた。
でも、1球狙いが外れてど真ん中へ。それをバッターが見逃してくれるはずもなく、まさかのホームラン。満塁だったことから一気に4失点。あの1球に泣いた試合だった。
「そうだよな。せっかく俺のお願い聞いてくれてるんだし楽しまないと」
お願いって言うのは例のテストの点で勝負したときのご褒美のやつ。
「それにしても祐くんのお願いにはびっくりしちゃったよ。私にあんなこととか、こんなこととかするのかと思ったら全然違うんだもん。あっ、それとも1日お願い聞くって約束だから今からなのかな?」
「そんなこと絶対にしないからね!?」
最近の葵はかなり危険。はっきり言ってえっちだ。本人には言えないが。
そして電車に揺られること1時間。バスに乗って15分。目的地へ到着した。
「わぁ人も何人かいるね。それにしてもすごい!
こんなところが私たちの県にあったんだね!」
俺たちが来たのは標高200メートルくらいの山でこの10月下旬から11月の間は観光客が大勢訪れる有名地。
「わわっ、もう木が赤くなってるよ」
そう。俺たちが来たのは紅葉の名所。この時期は山が一気に色を変える。この山は全体が赤くなり、登山道や頂上からの眺めがめっちゃいいらしい。
今日はまだそんなに人は多くないがあと2週間もすれば人でごった返すこと間違いなし。
そして俺がお願いしたものこそ「紅葉狩りへ行こう」だ。葵は少し驚いてたが笑顔で了承してくれた。
ただなんで「紅葉狩り」って言うんだろう。「キノコ狩り」とかはなんとなく分かるけど「紅葉狩り」の「狩り」ってどう言う意味なのかわからない。
でもまぁそんなことは放って置いて登山道を登って行こう。
「はい、葵。道が悪いところもあるから」
「うんっ! この手は離さないようにするね」
こうして2人で山道を進んで行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます